【1回表】2球目

まず、私を産んだ母の話からいこう。母の名は『利枝子』という。母の両親は和菓子屋を営んでおり、歌舞伎役者やお琴・三味線の先生方に献上していた。その影響か母は肩書き大好き、ステータス命である。ブランド物をこよなく愛し、手土産も母の口から出てくるものは今でも老舗で有名店のものばかりである。母は父と真逆で兄が2人の3人兄妹で、『ピーコ』という名前の猫を飼っていた。

長男は上京し、東京で祖父の後を継ぎ、和菓子屋をやっていたが、若くして亡くなった。亡くなった後、私の従兄弟である叔父の長男が継いだが、長男も若くして亡くなった。この辺りは後ほど(作者が忘れていなければ)詳細を書くことにするので事実のみに留めておく。次男は和菓子屋を継ぐことはなかったが、似た業界で起業し、小さな会社で社長をやっていた。

少し逸れたが母自身の話に戻ることとする。母は調理師学校を卒業し、ハイブランドの大手和菓子メーカーに就職し、実家から通っていた。時代もあったと思うが、全身ハイブランドを身にまとい、羽振り良く出勤していた。母は友人の紹介で1人の男性と婚約をする。この男性は父ではない。彼は俳優の息子で彼自身も俳優の道に進んでいたようだ。代々木に実家を構え、そこそこの資産を有していたと母から聞いた。そんな中、母は交通事故に巻き込まれる。車に轢かれた母は片腕が動かなくなってしまい、しばしのリハビリ生活を余儀なくされる。そこで結婚をしても、家事も出来ず何もできないという理由で、祖父母と母で相手の一家に頭を下げて婚約を破棄する運びとなったと聞いた。普通、婚約者が交通事故に巻き込まれたら、側で支えるものではないのか?と思うが、相手の家柄の問題なのか、表面上の婚約だったからなのか、真意まで聞けてはいない。婚約破棄に伴い、新婚生活での新居を構えるために母の身長に合わせてカスタマイズしたキッチンも母の好みに併せて設計されたリビングも寝室も白紙に戻すことになった。(なんと・・・勿体無い。笑)

ここまで聞いて勘違いしないで(していないかもしれないが)頂きたいのは、母は非常に図太い神経の持ち主である。交通事故にあった母は、交通事故にあった際に持っていた鞄や財布を縁起が悪いと言って、すぐに百貨店のブランドコーナーへ行き、鞄を購入した後、それまで持っていた鞄と財布をゴミ箱にすて、札束を新しい鞄に直接入れて事なきを終えた女である。それ以上は私はまだ聞いていないし、今後聞くこともないかもしれない。

その後リハビリも終えた母は、父と飲み屋で出会い、交際に至る。父は母と出会った時、バツ1であり娘が2人いた。前妻は病気ですでに他界しており、母は交際を経て、後妻として不二家に入ることとなる。交際中の状況を詳しく聞いたことはないが、父が母の実家に足を運び、母の実家で本を読んでのんびりしていたというエピソードは聞いた。嫁ぐ際の話はあまり聞いていないが、後妻で入ることをあまりにも心配した祖父母は不二家の紋ではなく、実家の紋を入れた着物を一式作り、母に一式持たせて嫁がせたと聞いている。実家の紋を入れた理由は、祖父母もすでに他界していたし、母も話さなかったため、今でもわかっていない。


ここまでが不二家に嫁ぐまでの母の簡単なエピソードだ。

ちなみに私はピーコから嫌われていた。それは私が祖父母の家に行くといつも、髭や尻尾をいじって遊んでいたからだ。女の子だった私の顔に傷がつくことを恐れた祖母と母はピーコが私に仕返しをしようものなら、全力でピーコを叱った。その為、私が祖父母の家に行くと、ピーコはいつも逃げた。ピーコは非常に賢いが変わっている猫で、好物はまぐろのお刺身で祖父が帰宅するのをハチ公のように迎えに行き待っているような猫だった。今思えばもう少し優しくしておけばよかった。


さてさて、次は父の話をすることにする。作者の気が変わらなければだが・・!



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