プロローグ:あたしにとって、あんたは


 ねえ。“彼”とはどんな関係なの?


 そう問われれば、自分はなんと答えるのだろう。

 やはり今のところ、魔術の『師弟です』と表現するのが妥当だろうか。


 そうでなければ、こんなに真剣な彼の紅い瞳は拝めなかったはずだ。


「……覚悟があるというのなら、お相手しましょう」


 自分の意気込みを受け、まっすぐに黒い杖を向けてくる師。

 びしびしと容赦なく肌を打つ彼の魔力が、自分の未熟さを叱咤しているよう。


「この一発に、ぜんぶ懸けるッ!」

「来なさい」


 けれど、追いかけてばかりもいられない。

 憧れるだけでは――彼のとなりに立つ女にはなれないから。



「いくよ!」



 だから、この戦いが終わったらきっと。


 “あたし”にとって、“あんた”は――


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