第4話 ご案内

 晴天。

 朝起きて窓から外を見たルナードは、がっくりとした。


 「雨降りだったらよかったのに」


 今日は、ディアルディを案内して歩かなくてはいけない。


 「めんどくさ」


 だが引く受けたなら最後までするのが神官だ。

 ルナードは、家族は嫌いだが神官の職には、誇りを持っていた。だから一生独身を貫いて神官を全うするつもりでいた。


 「おはようございます」


 リビングに行くと、ディアルディはすでにいた。

 ディアルディは、ルナード見て少し驚いている。ルナードが、神官の格好をしているからだ。

 ルナードは、いかなる時も神官の服装をしている。なぜなら一番女だとバレない格好だからだ。神官=男。誰も女だとは露程も思わない。


 「朝食を食べたら出かけましょう」


 そう言ってルナードは席に着く。

 食事中、一切ディアルディには声を掛けなかった。

 食事を終え、玄関でルナードはディアルディを待つ。


 「待たせたな」


 マカリーと一緒にディアルディが来た。ディアルディは、軽く会釈をする。


 「ルナード。お前は歩くのが速い。彼女に合せて歩いてあげなさい」

 「……わかりました」


 ルナードは、さっさと回ろうと思っていたので、いつも通りいやそれよりも早くスタスタと歩こうと思っていたが、マカリーに釘を刺されてしまった。


 「行ってきます」


 ルナードが歩き出すと、少し後ろをディアルディは歩く。二人は無言だ。まあディアルディは、話せない事になっているので、ルナードが何も語らないだけだが。


 「あ、神官様! おはようございます」

 「おはようございます。今日はいい天気ですね。日射病には気を付けてくださいね」

 「はい。ありがとうございます。あの……その方は?」


 ルナードはチラッとディアルディを見る。


 「マカリー様の客人です。街の中を案内して差し上げています」


 ディアルディは、にっこり微笑んで会釈する。特段、この説明で不満はなさそうだ。


 「では、失礼します」


 ルナードは歩き出す。


 「もう気づかれたでしょうが、私は外面いいんです。特段、あなたと仲良くする気もありません。あなたもそれを望んでいないと伺ってますが、合っておりますか?」


 問うとディアルディは、そうだと頷いた。


 「そうですか。よかった。暫くは、マカリー様の客人としておいて下さい。……あなたの素性がもし、とんでもなかったら私も困りますので」


 このセリフには、ディアルディもちょっと眉をひそめた。


 「私だけでなくマカリー様にもご迷惑がかかりますので、勝手に出歩くのだけはお控え下さい」


 そう追加したルナードの言葉にディアルディは、ジッとルナードを見つめ、そしてゆっくりと頷いた。


 「お! ルナード! 休日にまで制服かよ……。女づれ!?」

 「ダンザルさん……おはようございます」


 めんどくさい奴に会ったと内心思うも挨拶を交わす。


 「すげぇ、美人だな」


 ダンザルが目の色を変えて、ディアルディに近づく。


 「ダンザルさん。彼女はマカリー様の客人です。手を振れない様に」

 「な、何だよ、その手を振れない様にって!」

 「そのままの意味です」

 「お前、俺の事どう思っているんだよ」

 「……女性を口説くのがお上手かと」

 「ふーん。お前、彼女に興味あるんだ」

 「一切ない!」

 「……お前、本人の前でそれはちょっと失礼だろうが」


 小声でダンザルは、ルナードに言った。

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