第3話 仮初めの婚約

 ルナードは、壁に体を預け腕を組み考えた。ディアルディとマカリー二人の目的はなんなのか。

 神官と言う職業は、ある意味女性にモテる職業だ。だからダンザルの様に、女好きで神官になるやつもいる。

 そして今でも、代々神官の家系が多い。


 ルナードもそうだった。ただマカリーには、娘が一人しか授からなかった。だから婿をとった。マカリーの娘、ラルーには幸い特別な力はなかった。だが何故かルナードにはあったのだ。

 マカリーは、娘のラルーを説得しルナードを男の子として育てた。


 ”それなのになぜ、マカリー様は彼女を連れて来たのか”


 ラルーの言う通りだとしても、魔女だとバレる可能性がある。話せないとしても、人に伝える方法はあるのだ。

 それでもディアルディを連れて来た。何か裏がある。ルナードは、そう思った。たぶんそれは、ラルーも知らないのだろう。

 ルナードには、マカリーの策略にみえた。


 ”魔女を神官に仕立てマカリー様は何をしたいのか。自分をどうするつもりなのか”


 物事を理解出来る様になったルナードは、そうマカリーの事を見ていた。神官長のマカリーが、魔女を育てるには何かを企てているに違いない。だがそれが、未だに見えてこないのだ。


 「化けの皮を私がはがしてやる」


 そう呟くと、ルナードは部屋を出た。

 皆が居るリビングへと向かう。ルナードが姿を現すと一斉に振り向いた。


 「マカリー様。先ほどは失礼しました。彼女との婚約、お引き受けします」


 軽く会釈して言ったルナードに、全員驚いた。


 「そうか。よかった。ディもよいか?」


 嬉しそうにマカリーが問いかけると、ディアルディはこくんと頷いた。


 「どうです? 私の部屋で紅茶でも」


 ルナードがそう言うと、ディアルディは少し驚いた顔をする。


 「嫌なら結構。どうせ仮初めの婚約者ですからね」


 ルナードがニッコリと言うと、マカリーが驚いている。


 「おや違うのですか? 彼女からそう伺いましたが? だからお受けしたのです」


 ディアルディがニッコリ微笑んで、そうだと頷いた。


 「では、これで」

 「ルナード! 明日は、休みだろう?」


 戻ろうとするルナードをマカリーが引き留める。


 「はい」

 「だったらこの辺りを案内してあげなさい。それぐらいは出来るだろう。ディは、ここら辺を知らないからな」

 「また、めんどうな……」


 ボソッとルナードは呟く。


 「わかりました。適当に案内します」


 クルッと背を向けるとルナードは自分の部屋に戻って行った。

 ディアルディが、すくっと立ちあがる。


 「部屋に戻るのか」


 マカリーが言うと、ディアルディがそうだと頷く。軽く会釈すると、ディアルディは与えられた部屋へと向かう。その部屋は、ルナードの隣の部屋だ。

 部屋に入るとディアルディは、ごろんとベットに身体を預け横になる。


 「なんだあいつ……」


 呟いたディアルディの声は野太い。

 大抵の男性は、興味が無いといいつつ、ディアルディに近づいて来る。声が出せないと知ればなおさらだ。

 ルナードは、自分に全く興味がなさそうに思えた。だが、ディアルディには、都合がよかった。これなら男だとバレる事はないだろうと思ったからだった。

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