第4話


ブォン


俺が暫く水素自動車を道路の真ん中に停めて誰も居なくなった街を眺めていると、突然目の前にディスプレイが現れてさっきの異次元人の姿が映った。


「ハローハローこちら異次元人調子はどう?」


異次元人は陽気に手を振った。


「………」


「おや、随分と落ち込んでるみたいだね」


「………」


「そんな君に朗報がある」


「……は?」


「同じ境遇の人達と会いたくないか?」


「本当か?」


「もちろん、君が望むなら」


「当たり前だ!望むに決まってるだろ!」


気がつくと目の前に扉が現れてドアを開けてディスプレイでみた異次元人が顔を出した。


「どうも」


「ど、どうも」


「行きますか?」


「ど、どこへ?」


「円盤のような…」


「円盤?」


「怖いですか?」


「いや、行く!」


こんな所で一人でいたってどうにもならない。


「では、参りましょう」


異次元はうやうやしくドアを大きく開いた。


ドアを抜けると……


そこは東京ドームだった。


「え?東京ドーム?」


「はいその通り」


異次元人はクククッと笑った。


「まさか、ここに集まった100人で殺し合いをしろとか言わないよな?」


「まさか、そんな野蛮な事はしませんよ、前にも言いましたが我々は温厚なので」


「温厚?だとしたら居なくなった人間を戻してくれ」


「それは出来ません」


「なぜ?」


「居なくなったものを元に戻すには時間を戻さなくてはいけません。我々のテクノロジーでは空間を歪めて、近道を作ったりするのが精一杯なのです。ま、更にテクノロジーが進んでも時間を戻すなんて事が出来るとは思えませんけどね」


「そこをなんとかするのが科学者だろ」


「それは科学者というよりロマンチストですね」


「……まぁ、いい」


「御理解痛み入ります」


異次元人がたまにうやうやしい態度になるのは日本の文化を間違ってインプットしてるのかフザケてるのか判然としないので怒れない。


「じゃあついでにもう一つ聞いておきたい」


「なんでしょう?」


「何故俺なんだ?」


「はい?」


「無作為に選んだ訳ではないだろう?」


「ええまあ」


「理由を言えないのか?」


「まぁ、言っても良いですけどちょっとしたクイズにしましょう。貴方と同じ様に選ばれた人々がこの扉の向こうに居ます」


「なるほど、その人たちを見て予測しろって事か」


「察しが良いですね」


そう言って、異次元人は高級ホテルのドアを開ける様に扉を開けた。



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