消え去った人は殺せない
昨日僕が死ななかったのは、単に僕が「主人公の幼馴染」というまあまあ重要なキャラで、世界にとってまだ必要な存在だったからだ。そうでない場合、死に方にかかわらず、そのキャラクターは消える。死に方や理由なんて、世界によってどうとでも都合の良いように変更されてしまう。「急な引っ越し」や「旅行に行った」という風に。その証拠に、すでに近所の住民の何人かは消えている。
僕が殺したわけではない。
ただ、様子がおかしいな、と思うと、その人はいつも翌日には消えてなくなっている。彼らは普通に暮らしているように見えて、橘と同じように、どこかが欠けて、歪で、不自然さを纏っていた。いつも同じ台詞しか言えなかったり、如何しようもない無感覚に陥ったり、目から涙を垂れ流して楽しげに笑ったり。そんな違和感に気づいてしまったのか、それとも気づかないまま、歪みに耐えきれなくなったのか。とにかく、名も無い彼らは死ぬ。そしてその死を誰かが悼むことも、この世界では、いつもない。
それが、日常だから。
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