第24話 とんでもないまどうぐでしゅ

 おはようございまーす! 本日も雨でーす!

 朝から昨日の残りのカレーを平らげた大人三人は、それぞれの役割をすると言って外に出て行った。私は残って火の番と鞄の整理というか中身の把握。

 だってさ……バステト様がいろいろ送ってくれたから。ほんっとうに! いろいろと! 送ってくれたから!

 服や靴はいい、これから必要になる冬物ばかりだし。

 食料や料理に使う道具も大人の人数が増えたから助かるし、森で採取できない野菜があるからいい。肉は森で狩れるから問題ない。

 問題なのは、使い方のよくわからない道具類。なんじゃこりゃ、なものが結構あるのだ。

 そこで、久しぶりの鑑定さんの出番ですよ!

 鑑定を駆使してわかった道具類は、ラノベでもお馴染みの魔道具と呼ばれるものだった。

 まず、灯りの魔道具。デザインは二種類で、見た目としてはカンテラとキャンプ用ランプを足して二で割ったものと、室内用ランプだろうか。

 鑑定さんによると、不思議デザインはカンテラで、それを持ってダンジョンにも潜れるし、テントの中の灯りにも使える優れもの。現代日本でいうなら電池式で、電池部分が魔石だ。

 つまり、魔力で光るものらしい。

 灯りを点けるのも消すのも、スイッチひとつでOKという、なんとも便利なものだったりする。幼児が押しても大丈夫なほど軽いスイッチだ。

 もうひとつのほうは、笠があるもの。見た目は電球のところに笠を被せてある、テーブルランプのよう。

 笠のデザインはとてもシンプルだけれど、有名なアンティークランプのようにステンドグラスになっていて、灯りを点けると岩の壁にその模様が映し出される。とても綺麗で、ベッドサイドやチェストの上に飾ったら、素敵だと思う。

 いつか村や町に着いて自分の家や部屋を持つことができたら、飾ろう。


 次に見たのは四角い金属の箱で取っ手がついており、つまみがふたつある。ただし、箱自体は幼児でも持てるくらい軽い。

 見た目は電子レンジやオーブンに近い。もしかしてと思って鑑定したら、ズバリオーブンでした! しかも重量軽減つき!

 つまみの部分は温度と時間みたい。

 これも魔石で動くやつで、中は三段になっているもので、業務用とまではいかないけれどかなりの大型だ。きちんと温度調節機能がついているから、お菓子だろうと肉料理だろうと、なんでもできそうで嬉しい。

 これも自宅ができたら設置決定。その前に一回、何か作ってみよう。材料もあるしね。


 三つ目はなぜかキッチン。しかも、システムキッチン。

 意味がわからん。

 てなわけで、鑑定さーん!



【 システムキッチン 】※ステラ専用

  ステラ用に設えたシステムキッチン。ステラの身長に合わせ、勝手に

  サイズ変更する優れもの

  水回りとコンロは全て魔石を使用しているが、周囲の魔力を取り込む

  ことによって稼働するため、魔石の交換は必要ない

  汚水やゴミは浄化装置により勝手に綺麗になり、綺麗になった水や

  ゴミは外に転移するので、処理する必要もない

  ステラ専用キッチンなので、他人が使用することも転売することも不可



「ふぁー!? どゆこと-!?」


 私専用のキッチンってなにさ!

 浄化槽付きっておかしいでしょ!

 確かに洞窟などで出したら使えないだろうから、汚水やゴミが勝手になくなるのはありがたいけど!


「ばしゅてとしゃま……なんちゅーものを……」


 なんかさ……孫にホイホイ物を与えるジジババになっとるやないかい。嬉しいけど……なんかちがーう!

 叫んだところで、今さらどうにもならず。と、とりあえず、これも家が手に入ったら設置しよう。


 そして最後は種。この世界の野菜とハーブ、果物の種がある。それはいい。

 が、一種類だけ摩訶不思議な種があるのだ。大きさは大玉スイカで、見た目はヤシの実。

 鑑定さーん!



【 ツリーハウスの種 】

  地面に埋めると大きくなり、ツリーハウスができる種

  住人がいるかぎり腐ることも枯れることもない

  引っ越しすると唱えると種に戻る

  部屋の移動は、中にある階段を使う。大きいものは昇降機がついている



 ……なんじゃこりゃー!


「ば、ばしゅてとしゃま……やりしゅぎでしゅ……!」


 本当にこの世界にあるものなの⁉ 魔道具はともかく、この種だけは三人に聞かないと……!

 しばらく両手と両膝をつけて項垂れたあと、思いっきり溜息をついてから気合いを入れ直す。よし、気分転換と操作慣れのために、お菓子を作ろう。

 何を作ろうか考え、ジャムを使ったパウンドケーキを作ることにした。クッキーでもいいんだけれど冷蔵庫がない。

 生活魔法の水と風で冷やせるかなあ? これはあとで実験するとして、今は先にパウンドケーキの生地を作らねば。

 猫の鞄に手を突っ込んで画面を出し、食材をタップする。その中でバターと砂糖、卵を出したあと、粉物のアイコンをタップする。

 ずら~っと並んだ名前には小麦粉三種類はもちろんのこと、ゼラチンや粉寒天、ドライイーストやベーキングパウダー、なぜかホットケーキミックスまである。……バステト様ぁ……。

 とりあえず薄力粉とベーキングパウダーを出して準備完了。あとはボウルと泡だて器、ふるいとパウンドケーキ型を出せばいいかな。

 型は日本でもよく見た金属のやつで、どんな金属が使われているのかわからない。見た目は日本にあったものと遜色ないけど、絶対に異世界で採れる金属を使っているに違いない(確信)

 恐ろしいことになりそうなので、鑑定さんはおやすみでい。

 まずはスイッチを入れてオーブンを170度に温めておく間に、材料を混ぜ混ぜ。今回はプレーンとイチゴジャムを使ったもの、バナナを潰して混ぜたものを用意。

 それから型にバターを塗ってから薄力粉をはたき、そこに各生地をドボン。

 上から落として空気を抜いたら、オーブンに入れて時間をセットしたら放置。

 その間にクッキー生地を作って、魔法で冷やせるかどうかの実験だ。

 材料を出して混ぜる。ナッツ類もあったので、16割りのアーモンドとくるみをフライパンで炒ったあと、冷ましてからその生地に混ぜ込んだ。

 それから魔法を使って冷やしてみたけど……うん、三分もたたずに冷蔵庫に入れた状態と同じになった。魔法って便利だな☆

 型で抜いたりそのまま輪切りにしたりしたあとで天板に並べ、パウンドケーキの下の段に入れておく。残り時間を見て入れたから、多分大丈夫だろう。

 あくまでも実験だしね。

 あとは洗い物をして道具を片付け、簡単にお昼ご飯の用意もしておくか。メインはテトさんが作ると言っていたから、スープだけ用意すればいいかな?

 ベーコンブロックとキャベツ、ニンジンやブロッコリーみたいな野菜などたくさん出して切る。それをブイヨンの中に入れてコトコトと煮て味を調えると、ポトフになる。

 いいんだよ、適当で。お腹の中に入ってしまえば、みんな同じであ~る。暴論? 知ってる。

 そんな感じで大人たちを待っていると、オーブンが「チン!」と音を立てた。


「おお~、きれいにやけてるでしゅ!」


 これは期待できますな!

 串を刺して中が焼けているかどうかを確認したあと、見た目も確認する。どれもきちんと焼けているのがすごい。

 天板にも重量軽減がかかっているらしく、簡単に出し入れできるのは助かる。なにせまだ三歳児だからね。普通なら持つことすらできまい。

 そっとテーブルに載せたあとはそのまま冷やし、荒熱が取れたらパウンドケーキは型から外す。

 そこまでやってポトフの火加減を落としたところで、大人たちが帰って来た。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る