第23話 キャシーしゃんのしゅてーたしゅでしゅ

 大人たちは一人三杯もおかわりし、満足したようにお腹をさすりながら笑みを浮かべている。ラッシーが気に入ったらしく、今はそれぞれがお気に入りになった味のラッシーを飲みながら、明日以降の話をしていた。

 私はテトさんにイチゴを潰してもらい、イチゴミルクを飲んでいる。これはこれで美味しいよね~。うまうま。

 そうこうするうちに真っ暗になり、焚火から出る炎の灯りが岩穴内を照らしている。それだと暗かったらしく、キャシーさんが灯りの魔法を使い、球体をいくつも浮かべていた。

 何をするのかと見ていたら、自分の下にある蜘蛛のお尻から糸を出し、それを束ね始める。束自体は、糸巻き板を使うことなく、ロープのように蜘蛛の前脚? を使い、くるくると動かしているのだ。

 自前とはいえ、なんとも器用なことだ。

 だけど、なんでそんな束ね方?


「キャシーしゃん、しょのいとはにゃににちゅかうれしゅか?」

「これ? 雨降りの間に染めようと思ってね。今のうちに糸を束ねているのよ」

「ほえ~。しょのいとでにゃにをちゅくるでしゅか?」

「布団やクッションはもちろんのこと、ステラちゃんの服もよ」

「どうやってぬのにしゅるでしゅか?」

「機織りするの。ただ、それだと時間がかかるのよ。だから、アタシの種族特有のスキルを使って、一気に布にするわ」


 な、なんと! なんとも凄いスキルだな!

 そんなキャシーさんのステータスも凄かった。



 名前  スティーブ(自称キャスリン)

 性別  男

 年齢  11391

 種族  アラクネ(特異体)

 レベル 5011/999

 スキル 魔法の心得(Lv:ー)

     植物図鑑(Lv:ー)

     糸変化(Lv:ー)

     裁縫の心得(Lv:ー)

     機織り(Lv:ー)

     魔力循環(Lv:ー)

     魔力操作(Lv:ー)

     地理把握(Lv:ー)

     地形把握(Lv:ー)

     気配察知(Lv:ー)

 魔法  風魔法(Lv:ー)

     水魔法(Lv:ー)

     雷魔法(Lv:ー)

     結界魔法(Lv:ー)

     時空間魔法(Lv:ー)

     転移(Lv:ー)

     付与(Lv:ー)

     布錬成(Lv:ー)

     マップ生成(Lv:ー)

     生活魔法

     看破

     変身

     言語理解

 称号  女神バステトの神獣

     超越者

     世界を踏破せし者

     世界に君臨せし者

     不老不死

     優しき魔物

     オカマでオネェ

     バトラーの友人

     テトの友人

     ステラの溺愛者NEW



 こんなんでましたー(棒)

 いろいろ突っ込みどころ満載なんだけどさ……。

 名前のところの自称キャスリンってなに?

 称号の〝オカマでオネェ〟ってなんやねん! 似非関西弁で突っ込んだるわ!

 あと、私の溺愛者ってなにさ! 意味不明だよ!

 そんな自分のステータスを見て満足しているキャシーさんと、ドン引きしているバトラーさんとテトさん。どこで満足しドン引きしているかというと、私の溺愛者のところだ。

 ですよねー! 普通にドン引きしますよねー! 私だってドン引きしたわ!

 ちなみに、友人枠はバトラーさんもテトさんも増えている。本来はたくさんの名前が並んでいるそうなんだけど、私がその人と会い、認識すると私にも見えるようになるんだって。

 なんとも不思議なステータスだなあ。

 そんなキャシーさんに溺愛された私のステータスがこちら。



 名前  ステラ

 性別  女

 年齢  3

 種族  神族

 レベル 40/999

 スキル 魔法の心得(Lv:ー)

     料理人(Lv:ー)

     調合(Lv:1)

     魔力循環(Lv:7)

     魔力操作(Lv:7)

     地理把握(Lv:1)

     錬金術(Lv:1)

     気配察知(Lv:1)NEW

     裁縫(Lv:1)NEW

     機織り(Lv:ー)NEW

 魔法  風魔法(Lv:ー)

     火魔法(Lv:ー)

     雷魔法(Lv:ー)

     光魔法(Lv:ー)

     生活魔法

     鑑定

     言語理解

     マップ生成(Lv:ー)

     錬成(Lv:ー)

     付与(Lv:1)NEW

 称号  女神バステトの愛し子

     転生者

     神獣バトラーの愛し子

     神獣テトの愛し子

     神獣スティーブ(自称キャスリン)の愛し子NEW



 ちまちまと一当てして不要物を燃やしていたからなのか、レベルが40になっていて、気配察知が増えている。これは訓練して、スキルになったからだ。

 そして首を捻ったのが裁縫関連のスキルと魔法。今までからいうと、保護者になってくれたから、バトラーさんとテトさんのスキルをもらうことができたと思っていたのだ。

 だけど、キャシーさんは保護者じゃなくて、溺愛。なんで?

 その疑問を三人にぶつけてみた。


「ああ、それは保護者ではなく、愛し子だからだ」

「愛し子になると、スキルや魔法が使えるようになるのよ」

「とはいえ、我らが使うものよりも性能が落ちるんですけどね」

「はえ~……。しょうなんれしゅね~」


 まさかの、愛し子だからだとは思わなかった。

 三人の話を総合すると、神獣の愛し子になると、その神獣が得意とするスキルや魔法を授けることができるという。ただし、神獣が扱うような最高峰のものではなく、あくまでも下位互換なんだとか。

 もちろん、神獣に授けられなくてももともと持っていたり、職業に付随したスキルが生えたりすることもある。それでも、神獣から授かったスキルに比べたら更に一段劣るらしい。

 とはいえ、スキルがあるだけでこの世界の住人から見れば、最高峰のものになるのは当然、とのこと。

 魔法に関しても、この世界の住人たちが使う上級魔法は、神獣たちからすれば中級魔法の中でも下のほう。極大魔法と言われているのですら、中級の真ん中か上。

 それだけ、神獣と住人たちとの力の差は歴然であり、越えられない壁が存在するのだ。

 中には超えた人間もいるにはいるけれど、魔力が足りなくて神獣が使う上級魔法が放てないそうで。結局は中級止まりで終わる、らしい。


「その点からいえば、ステラちゃんは上級を放てるようになるかもねぇ」

「そうだな」

「どうして、でしゅか?」


 怖いこと言わないでおくれ、みなさん。好き好んで神獣が使う上級魔法なんざ使いたかないやい。


「まず、バステト様の愛し子になること自体がまずない」

「それから、神獣の愛し子自体も数が少ないわ。五百年に一人いればいいほうね」

「それなのに、ステラはバステト様だけではなく、僕たち三人の神獣の愛し子なんですよ?」

「それらを踏まえると、まず魔力が桁違いになる」

「ぎゃー! しょんなのいらねー!」


 魔力が桁違いとか、いらねえよ!


「まあ、まだ幼子であるからな。その大半が眠っているであろう」

「そうですね。ステータスには現れませんが、隠れ要素としてありますし」

「そうねぇ。アタシも一応、魔力量はわかるわね」

「ほえ~……」


 魔力が数値として見えないのって、そういう理由なのか。

 詳しく聞くと、何回も魔法を使っていると、魔力枯渇という状態に陥ることがあるという。その状態になると、死にはしないがぶっ倒れるんだそうだ。

 それを何回か繰り返すうちになんとなく自分の魔力量がわかるようになり、ある時いきなり、ステータス欄に魔力が記載されるんだって。記載されても、他人に見せるためにステータスをオープンにしたところで他人には見えず、自分だけが見えるらしい。

 それと同様に体力も同じ仕組みになっていて、こっちは体力がなくなると疲れやすくなるという。

 魔力にしろ体力にしろ、数値がゼロになったからと言って死ぬことはないが、確実に数日間は寝込むそうだ。

 ……ゲームのように、ゼロになった瞬間に死ぬことがなくてよかったよ。

 ただ、人間の摂理として毒や即死魔法を喰らったり、心臓を突かれたり頭を潰されたり、首を斬られたり血が多く流れ出れば確実に死ぬそうなので、毒や怪我だけは注意しなさいと言われた。

 まあ、そりゃあそうだよね。それで生きてたら怖いわ!

 そんな話をしているとあっという間に夜は更けてくる。

 幼児はおねむの時間だね!

 それでは、おやみなさーい!


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