第13話 しゅてーたしゅをいんぺいでしゅ

 バトラーさんなら隠蔽の仕方を知っているというので、さっそくやり方を教えてもらうことに。


「どうやるでしゅか?」

「ステータスと唱えるとステラのステータスが書かれているものが出る。そうしたら隠したいものを触るだけだ。ちなみに、他の人間に見せる場合はステータスオープンと唱える」

「おおう……」


 まさかの! ステータスで! 画面が見れるとは! 思わなかった!

 何のための鑑定だったのか……!

 思わず地面に両手両膝をついて項垂れたよね……英小文字のO、R、Zの形になったさ……。

 そんな体勢の私を不思議そうな顔をして首を傾げたバトラーさんに、「なんでもない」と話して気を取り直すと、ステータスと唱える。すると、鑑定したものと同じものが書かれている画面が現れた。

 女神バステトの愛し子と転生者をタップして、しっかりと隠蔽する。他に隠したほうがいいものはないかなあ? バトラーさんに聞いてみると、珍しいスキルや称号を隠すことはあるが、他は誰かしらが持っているものだから、隠す必要はないと言われた。

 ただ、私にはそれがどのスキルかわからない。だからオープンにしてバトラーさんに見てもらうと、特にないと言われた。隠すとするなら、言語理解くらいらしい。よかった~!

 もちろん、言語理解は隠したとも。


「我以外にはステータスを見せるなよ?」

「あい」


 バトラーさんのステータスを見てみたいと話すと、明日見せてくれることに。そろそろ遅い時間だし、幼児は寝る時間だ。

 寝床に行くとティーガーになったバトラーさんに抱きつき、毛布をかけて横になる。ぬくぬくなバトラーさんの体温とゴロゴロという喉の音にホッとしているうちに、眠ってしまった。


 翌朝、起きてみるとやっぱり雨だった。だけど昨日までのバケツを引っくり返したような強い雨足ではなく、小雨のような降り方だ。


「ふむ……この分なら、夕方には雨も止むだろう」

「しょうしたら、あしたしゅっぱちゅでしゅか?」

「ああ。雨のあとだから、薬草やキノコがたくさん生えていると思うぞ」

「しょれはたのしみれしゅ!」

「雨のあとじゃないと採れない薬草やキノコがあるから、それを教えよう」

「あい!」


 おお、雨後の竹の子ならぬ、雨後の薬草とキノコか! それは楽しみ!

 朝ご飯を食べたあと、ギャーギャー鳥の骨とくず野菜でブイヨンをつくりながら、バトラーさんにこの世界の常識を教わる。もちろん、その間も魔力循環と操作をしている。

 話しながらできるようになったのが嬉しい。

 その中でバトラーさんのステータスを見せてもらった。



 名前  バトラー

 性別  男

 年齢  13592

 種族  ティーガー

 レベル 5699/999

 スキル 魔法の心得(Lv:ー)

     武器の心得(Lv:ー)

     武道の心得(Lv:ー)

     植物図鑑(Lv:ー)

     魔物図鑑(Lv:ー)

     調合(Lv:ー)

     魔力循環(Lv:ー)

     魔力操作(Lv:ー)

     地理把握(Lv:ー)

     地形把握(Lv:ー)

     気配察知(Lv:ー)

     解体(Lv:ー)

 魔法  風魔法(Lv:ー)

     火魔法(Lv:ー)

     水魔法(Lv:ー)

     土魔法(Lv:ー)

     雷魔法(Lv:ー)

     光魔法(Lv:ー)

     闇魔法(Lv:ー)

     時空間魔法(Lv:ー)

     結界魔法(Lv:ー)

     転移(Lv:ー)

     マップ生成(Lv:ー)

     生活魔法

     看破

     変身

     言語理解

 称号  女神バステトの神獣

     超越者

     賢者

     世界を踏破せし者

     世界に君臨せし者

     不老不死

     優しき魔物

     ステラの保護者NEW

     ステラの師匠NEW



 …… ち ょ っ と 待 て ! な ん だ こ れ は !


「ほえー! しゅごいれしゅ、バトラーしゃん!」

「ふむ……やはり保護者と師匠の称号が付いたか」


 気にするのはそこなのかよ⁉

 バトラーさんは神獣だからなのか、隠蔽しているものがたくさんある。隠蔽するとその文字がグレーになるんだけれど、年齢からレベルまで、魔法は雷から時空間までと看破から言語理解まで、称号は私の保護者と師匠以外は全部グレーになって隠蔽されている。

 つーかね? レベルの表示がおかしい。それに、超越者を含めたその下の五つの称号はなにさ!? あと、看破ってなに!

 隠すのも納得だよ。


「バトラーしゃん、かんぱってなんでしゅか?」

「魔物が使える鑑定だと思ってくれていい。名前が違うだけで、鑑定と変わらない」

「なるほど。あと、しょうごうとかいろいろとぎもんが……」

「ああ、ステラには馴染みがないか。神獣や一部の人間が持っている称号だな。もちろん、レベル表記もそれに準じている」

「あい?」


 バトラー先生ー! 意味がわかりません!

 レベル表記がおかしなことになっているのは、バトラーさんが超越者になったから。本来であればレベルは999が最高なんだけれど、それを超えて1000になった時点で超越者という称号が付き、右がカンストするレベルで左が現在のレベルなんだそうだ。

 もうじき6000ってことは、そうとう強いんじゃなかろうか。森で鑑定した魔物ですら、レベルが300から500とばらけているとはいえ、バトラーさんが瞬殺するのも納得だ。

 明らかにレベルが違いすぎる。凄い人、じゃなくて神獣に拾われたなあ。バトラーさんに声をかけてくれたバステト様に感謝だよ。

 その後もよくわからないスキルや魔法、称号を質問してみた。スキルでわからなかったのは図鑑とついているふたつと気配察知、魔法は時空間と転移、称号は賢者を含めた下三つ。

 まず図鑑と呼ばれるもの。これらは世界中にある植物と、魔物や動物と接触したり倒したりすると現れるスキルなんだって。コンプリートした時点でレベルMAX状態なんだとか。

 それまでは何も表示がなく、どれが不足しているのかわからないようになっているらしい。

 気配察知は、魔物や人がどこにいるのかわかるもので、魔力循環と魔力操作がレベル5になると習得可能になるという。それまではいくら練習したところで、スキルとして取ることはできないそうだ。

 ただ、練習は可能だから、循環と操作をレベル5になるまでに練習しておけば、両方がレベル5になった時点で気配察知をすると、スキルとして習得できるという裏技があるそうだ。


「ステラにもできるはずだから、それは明日、歩きながら教えよう」

「ありあとでしゅ」


 で、時空間魔法はその名前の通り、時空間を操る魔法だそうだ。ただし、過去や未来に行けるという、神が扱うようなものではなく、亜空間を作って物を収納したり、鞄に付与したりできる魔法だそうだ。

 亜空間の時点で、時間が経過しないようになっているんだって。ラノベで読んだインベントリやアイテムボックスみたいなものなんだね。

 亜空間の大きさというか収納量はその人の魔力量によって決まっていて、少ない魔力量の人でも六畳くらいのものは入るんだそうだ。バトラーさんは、大陸ひとつ分は優に収納できるらしい。

 ……さすが神獣、規格外どころかチートでござった!


「我が使っている亜空間はこれだな。あと、ステラの鞄もそうなっている」

「ほえ~」

「バステト様が与えてくださった鞄なんだろう? 恐らく、我よりも収納量が大きいと思うぞ?」

「……」


 鞄のほうがチートとは、これ如何に。

 転移はそのままの意味で、行ったことがある場所限定ではあるけれど、その場所に一瞬で行くことができるという。マップと連動していて、行きたい場所のマップを触りながら〝転移〟と唱えると、その場所に移動できるそうだ。

 おお、リアルほにゃららドアやんけ!


「バトラーしゃん、体験してみたいでしゅ!」

「そのうちな」

「じぇったいでしゅよ!」


 よっぽど興奮していたらしく、私の様子に苦笑しつつも頷いてくれた。今から楽しみだ!

 そして称号の賢者、世界を踏破せし者、世界に君臨せし者について。賢者は属性魔法七つと時空間、結界と転移、生活魔法という全ての魔法が使える人の総称なんだそうだ。

 神獣のほとんどがその称号を持っていて、この世界に生活している人や亜人の中にも、この称号を持っている人がいるという。ただし、どういうわけかひとつの国に一人しかおらず、その人が亡くなると別の人が賢者になるそうだ。

 不思議~。

 そして世界を踏破せしものはマップを全部カラーにしたからで、世界に君臨せし者は神獣の証ともいえる称号らしい。……バトラーさん、マジ最強じゃん!


「しんじゅうってほかにもいるんれしゅか?」

「ああ、いるぞ。そうだな……種族で言うのであれば、エンシェントドラゴンやエンシェントトレントなどがそうだな」

「ふおお……! どらごん! いちゅかみてみたいれしゅ!」

「ははっ! そのうち会えるんじゃないか?」


 おお、そうなんだ! それは楽しみ!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る