序章3

——《冒険者ギルド》——


 いつも通りギルドの飲食エリアで朝食を食べる。

 あの一件から数日が経った。あの場にいたモンスターを全て倒した後、村人を連れて洞窟から離れ、後から来た冒険者達と合流した。


「ライさーん!」


 受付嬢のルナさんが名前を呼びながらこっちに近づいてくる。


「?どうしたんですか?」


「この前の一件の事後処理の結果が王都から届いたので、一応報告しておこうと。」


 村人達を保護した後、あの件はギルドから王都の騎士団に引き継がれた。普通はギルドが後処理をし、騎士団が出てくる事は滅多にないが、村一つが壊滅したこと、俺から聞いたモンスターの発言から

、なんらかの組織的な動きがある可能性がある事による為だ。


「モンスターが隠れ家として使っていた洞窟、あの奥には転移魔法の魔法陣が印されていました。それも大人数が使用できる。」


「あいつらが言っていた”ゲート”ですね。あれだけの数を転移するにはそれなりの条件が必要なはず。アイツらの言葉によると開かれる時間が制限されていたようですが。」


「はい。開かれる時間は大体ライさんが洞窟を出てから少し後ぐらいの時間です。」 


 やはりあの男の言葉通りだ。転移魔法が発動すれば向こう側からの援軍が来る可能性もあった為、出来るだけ早くその場を離れたが。


「騎士団の奴らはその転移魔法をくぐったんですか?」


「はい。扉が開く時間帯になると、一度縄で繋いだ動物にくぐらせ、向こう側の異常がないと確認した後、突入したようです。」


「転移先は数十年前の廃城だったようです。多くのモンスターが出入りした痕跡があった様ですが、突入した時にはもぬけの殻。ですが少なくとも、種族の違うモンスター多数が一緒に行動していた事が分かります。」


 確かにこの前の奴らは種族がバラバラの集まりだった。他種族で群れを作る事自体はあるが、それは一方の群れの上位種がその群れを従われたり、用心棒をするようなものだ。あの群れは種族こそ違えど強さ自体にそれほどの差はないように見えた。


「そういえばアイツ、最後になんとか様がどうとか言ってたな。ソイツがあの群れを従わせていたのか?」


 あの群れには言葉を発する程度の知性を持ったモンスターがそれなりに居た。ソイツらが徒党を組み、従っている奴となれば少し厄介かもしれない。


「少し気になりますね。すいません、また何か分かれば教えてください。」


「分かりました。それと・・・攫われていた子たちですか、国からしばらくの間それなりの生活が保障されるらしいです。」


「・・・・・・。」


 保護された村人達は一旦王都へと送られた。ギルドに助けを求めてきた男も、娘と無事再開することができた。しかし、村をモンスター達に壊滅されたことで、彼女達には大きな傷がなかった。中には家族を殺された者も多いだろう。


「やはり村ごとに国から数名、護衛を派遣した方が良いのでは?今回みたいにことが起こってから対応するのは遅すぎる。」


「一応あの村にも自己防衛用の組織はあったのですが・・・。やはり一般人だけじゃ限界がありますからね。」


 そんなことを話していると剣士が1人近づいてくる。


「よおライ!お前この前言ってたダンジョン攻略まだ行ってないのか?」


「今日行くつもりだ。というわけでおねえさん。許可証の発行よろしくお願いします。」


「はい。ですが一人で大丈夫ですか?」


「この前のキャサーナとの賭けで負けた分、まだ払ってませんからね。ここらで一稼ぎしないと。」


「報酬出たら奢れよ。」


「お前の態度次第だ。」


 こうして俺はダンジョン攻略へと出発した。鍵開けや罠外しの準備を忘れて行ったのはダンジョンに入った後である。

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