第一話 別れ
「今まで、本当にありがとうございました!!」
私は深々と頭を下げ、今までお世話になった村の人達に対して感謝の言葉を送った。
「お嬢ちゃん!頑張ってこいよ!」
「あまり無理しないでね。」
「辛くなったらいつでも戻ってこいよ!」
「お姉ちゃん!ガンバッテェー!!!」
沢山の人たちからの励ましの言葉を受け、私は涙を堪えきる事が出来なかった。泣きながら私の腰に抱きついてくる子供達を、私も強く抱き返し「心配してくれてありがとう。行ってくるね。」と頭を優しく撫でた。
「これお昼ご飯作ったからよかったら馬車の中で食べて。町についても健康に気をつけなきゃだめよ。」
「うちの果物も持ってけ!」
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
近所の人たちから手向けのものを渡されて、再度私は感謝した。この人たちは特にお世話になった人たちだ。
「サラちゃん。」
声の先には私をここまで育ててくれたシスターと、同じ教会で育った子供達がいた。彼女は幼くして両親を亡くし、身寄りのない私を教会で引き取ってくれたのだ。親の記憶のない私にとって、彼女はお母さんのような存在だった。
「あまり無茶してはだめよ?貴方は意外と後先考えず行動することがあるから。」
「はい、気をつけます。」
「忘れ物はない?ちゃんと確認した?」
こんな時まで過保護なんだから・・・、そう考えていた私を、シスターは強く抱きしめた。それを追うように、子供達もまた私に抱きついていく。
「本当に・・・ほんとうに気をつけるのよ?いつでも戻ってきていいんだからね?」
シスターは涙を流しながら、しかし笑顔で私の目を見つめ、優しくそう言ってくれた。周りの子供達も、村の人達まで私のために泣いてくれている。
「はい・・・次会った時は必ず・・・立派になった私を見せてあげます・・・今まで本当に・・・ありがとうございました。」
「・・・この子に、神の御加護があらんことを・・・」
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「それでは、よろしくお願いします。」
「はい、東の町シルクスには明日の夕方ごろに着くからね。」
「はい。よろしくお願いします。」
私のその言葉ののち、馬車は走り出し、生まれ故郷であるハチノミ村を後にした。
「いい人達だね。まだ君を見送ってるよ。」
「・・・はい。」
村の人達は見えなくなるまで、ずっと私を見送ってくれた。これ以上あそこに長くいては、私の決心が揺らいでしまう。
「お嬢ちゃんは冒険者になるのかい?若いのに勇気があるねぇ。私も昔は憧れていたんだがなぁ。」
御者のおじさんは馬を操縦しながら私に話しかけた。見たところ歳は50代後半ぐらいだろうか。
「いえ、私なんてまだ大したことないです。」
私の名前はサラ=ウィズルネット。ハチノミ村で生まれ育った私はある日の出来事を境に冒険者に、それも職業:魔法使いになること決めた。私の村の近辺に魔法学校はなかったので、私は教会の書物や村の学校の図書室で、独学で魔法について学んだ。最初の頃は冒険者になることを周りの人たちによく思われることは少なかったが、時が経つにつれ、みんな私のことを応援してくれるようになった。
——これから私の冒険が始まる!辛いこともあるだろうけど、私は私の夢に向かって全力で突き進む!!
そう胸に誓う私を乗せ、馬車は森を抜け、壮大な野原を横切り、目的の町まで着々と近づいて行った。
——《東の町シラクス》——
馬車から降り、目的の町シラクスに到着しました。正直、この時点ですでに疲れています。
慣れない馬車の揺れは最初こそ心地いいものと思っていましたが、時間が経つにつれて、気持ち悪くなり夜はあまり眠れていません。
——うぅ・・馬車の揺れでお尻が痛い・・。でもこんなことでへこたれてはダメ!まずは冒険者になるため、ギルドで冒険者登録をしなければ!!
田舎者の私は、初めてくる大きな町の風景に戸惑いながら、街行く人たちに道を訪ねながら、ギルドへと向かった。
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