第二話 冒険者登録

——《冒険者ギルド》——


 ギルドに到着した私は早速その雰囲気に圧倒された。

 屈強な鎧で装備を整えた男性、黒装束を纏い魔法使いと言うよりは魔女と言い表したような大人びた女性、他にも女騎士、格闘家、シーフ、僧侶etc《えとせとら》・・・。

 美味しそうな匂いを漂わせる食事エリアや、武器や防具を調達する鍛冶屋。回復薬や冒険の小道具が売られている売店。

 私にとってそこは異世界と言っても過言ではないとともに、ここは私が長年の憧れの場所だ。

 

——とにかく、受付に行って冒険者登録を!!


 新参者のためか、周りの注目を浴び、余計に緊張しながら私は受付の女性に話しかけた。


「あ、あの。わっ私その、冒険者登録をしたいのでしゅが。」


———噛んじゃった!恥ずかしい・・・


「冒険者登録ですか?登録手数料が掛かりますがよろしいですか?」

「はっはい。大丈夫です。」


 受付さんは私のの言葉に受け答えした。長い青髪を後ろで纏めた、美人で大人びた女性だ。

 私は身につけていたバックからお金の入った袋を取り出し、指示された金額を取り出して受付さんに

渡した。


「はい、確認しました。ではこちらの書類に記載されている通りに記入して、あちらの受付にお渡しください。」


 受付さんに渡された書類に名前、年齢、性別、出身地、希望職についてを記載して、案内された受付へ持って行った。


「はい。確認しました。サラ=ヴィズルネットさん、希望職は魔法使いでよろしいですね?」

「はい。」


 こちらの受付の女性は私の持ち込んだ書類に目を通し、読み上げて私に確認した。

 こちらの女性は茶髪の短髪で、先程の女性よりもサバサバした雰囲気だった。


「わかりました。ではこちらの水晶に手を添えてください。そうすると貴方のギルドカードが発行されます。」


 私は言われた通りに差し出された水晶に手を添えた。すると数秒後、その水晶は発光、その光の粒子が手首の周りを一周し輪になったかと思えば、次の瞬間それがブレスレットのような形となって私の手首に身に付けた形で出現した。


「わっ!すごい・・・」

「これで登録は完了となります。クエストによって立ち入り制限のかかった場所に入る際や、身分証明が必要な際は、このギルド証明をお見せください。また、紛失された場合は手数料が掛かりますが再発行が可能なので、再度受付までお越し下さい。楽しい冒険者ライフを満喫なさってください。」

「ありがとうございます!」


 礼を言って私は受付を離れ、ギルドの中央にいくつか備え付けられたテーブルの席の一つに腰を下ろし、これからのことについて考えた。


——まずは寝泊りする場所を探さないと。さっき入り口で見たギルドの案内板によると、ここには冒険者用の宿泊施設があるみたいだけど・・。とりあえず、高いところじゃなかったら村を出る時にシスターに貰ったお金で1週間は過ごせ———


 そう考えながら宿泊代用の金貨が入った小包を確認しようとバックを覗いた。しかし。


——ウソ!?ない!え?なんで!?

 

 奥の隅から隅まで探しても金貨の小包だけはどこにもない。あんな重いもの落としたりしたって絶対気付くのに!

 そういえば旅立つ前日の夜、忘れ物はないかとバックの中のもの出しては確認し、また入れるを繰り返していた。その時最後にウッカリ金貨の小包だけを入れ忘れたのかもしれない。


——うぅ・・忘れ物しないように確認してたのが裏目に出るなんて。あれだけシスターに注意されたのに。


 とにかくこれはまずい。今私の手持ちは馬車代と登録手数料のおかげですっかり軽くなった小銭入れ用の小包だけ。これではとても一日中の宿泊もままならない。こんな出先からつまずくなんて・・。


——かくなる上は!!


 私はそそくさとギルド受付の横に設置されているクエスト掲示板へと向かった。


——今からクエストを受けて報酬をもらうしかない!!


 モンスター討伐やダンジョン攻略だけがクエストではない。簡単なお使いや手伝いの依頼などが張り出されている時もある・・・・らしい。

 だが、現実はそう甘くはなかった。貼り出されているクエストは殆どがとても駆け出しの私がこなせるものではない。


——【遺跡に現れた巨大ゴーレム退治】、【鉱山に住みつくキマイラ退治】、【森に現れたマンイーター退治】、こんなの今の私に出来るわけない!それに私がなんとか出来るようなクエストもクエスト受注条件を満たしていない!


 クエスト受注条件。クエストには受注する際、決められた条件を満たす必要があるものがある。職業、人数、時間帯、性別などがある。

 今は夕方。お使いや手伝いのクエストを受けるには依頼者の事情もあってか、朝か昼の時間帯しか受けられない。


——これは・・・本当に野宿するしかないのかな・・・。いや。こうなったら他の冒険者の人に一晩だけでも泊めて———


 すると、そうやって掲示板の前で頭の抱えている私の横に一人の男性が立ち止まり、掲示板のクエストを眺め始めた。

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