第三話 出会い

「・・・・これでいいか。」


 そう呟きながら手に取った依頼書の内容は【オーク達に横取りされたダンジョンの奪還】。

 せっかくダンジョンのモンスターを攻略し、宝の探索をしようと思った矢先に、現れたオークの群れに横取りされたから取り返してほしいという内容だ。しかもそのオークの群れを従えているのオーガだという。

 あのクエストは他のと比べて受注にかかる手数料が安く、クエスト受注条件も一つだけだった。その条件は。


——あのクエスト、確か受注の条件は冒険者二人以上が必要だったはず。でもあの人は見た感じ一人だし・・・・


 気になった私は受付へ依頼書を持ち込んだ男性と受付さんとの話に少し聞き耳を立ててみた。


「なぁお姉さん。受けさせてくれよぉこのクエスト。俺の実力ならこのクエストだって一人で攻略できるぜ?」

「別に貴方の腕を低く評価してるのではありません。このクエストの受注条件は冒険者二人以上。これはギルドのルールです。冒険者ならばそれを守ってくれないと。」

「いやでもさ俺今見ての通り一人だし・・・・。頼むよ俺今家追い出されてるし金もこのクエストギリギリ受けられるくらいしかないんだよ。」

「だったら他の冒険者さん達を誘ってみてはいかがです?条件は二人以上なのですから一人でも承諾してくれれば受けられますよ。」

「・・・・・・」


 受付さんにそう言われたその男性は、他の冒険者が集まる食事エリアへと駆け出して行った。


「なあエリック。今からちょっとクエストに付き合ってくれ。俺とお前の仲だろ?」

「悪いんだけど俺たち今日は朝からずっとクエストしてたんだよ。今はゆっくり休みたいんだ。」

「・・・・なあキャサーナ?俺とダンジョン行かないか?今度なんか奢るからさ。」

「別にいいけどアンタ。この前の賭けで負けた分まだ払ってないでしょ?一緒に行ったらクエスト報酬のほとんどは私がもらうけど?」

「・・・・なあディスコ!力試ししたくないか?俺と一緒にオーク退治で勝負しないか?」

「おお、いいぜ」

「本当か!?」

「ただし今日の晩飯にまた一番の三つ星レストラン《ウマスギ》のフルコース奢ってくれたらな。」

「金がねえっつってんだろ!!!このタコ頭が!!!!!」

「んだとテメェ!!大体金がないのだってお前の自業自得だろうが!!!」

「ッッッツ!・・・・・・」


 その後その男性は全ての冒険者達にクエスト同行を誘っていたが、全て断られてトボトボと受付まで戻ってきた。

 

「まあそうでしょうね。今日は昼ぐらいまで高報酬のクエストがたくさん貼り出されていましたから。」

「・・・・お姉さん。俺とデートしませんか?このダンジョンとかロマンチックじゃありません?」

「私は冒険者じゃないのでクエストに同行できません。」

「ウゴゴオォォォ!!・・・」


 最後の頼みも絶たれ、その男性は受付カウンターに突っ伏して呻き声を上げる。そもそも、受付さんがクエストに同行出来ないなんて分かりきったことではないのだろうか。しかしかくいう私も。


——この人はお金がなくて泊まる場所がない。私も。クエスト条件は二人以上。でもあのクエスト、私が受けるには難易度が高い気がする。だけど・・・。


 今は選んでいる余裕なんてない。どのみち私が受けられるクエストはない。私だって一日過ごせるかわからないんだ。

 私は勇気を出してその男性に話しかけた。


「わかりました。土下座ですね?そんなに俺の土下座が見たいなら見せてやりま———」

「あの!」

「・・・ん?」

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