16.エゴマの葉論争

「エゴマの葉論争って知ってる?」

「うん? なにそれ?」

 韓国料理のエゴマの葉の醤油漬けを食べる時に、葉っぱが一枚ずつ取ることが出来なくて食べにくいらしい。あたしと彼と、彼の友達の大樹くんとの三人でそれを食べた時、食べるのに苦戦する大樹くんをあたしが箸で手伝っても許せるかどうか。それがエゴマの葉論争なのだとか。

 説明したあたしに、彼は「なんで大樹も一緒に行くの?」と根本から否定的だけれど、それはともかく。あたしが気になるのは論争の方の答えである。

「あたしは、謙大が華にお手伝いしてても許せるよ」

「それは誰でも許せるやつ? それとも大樹の奥さんだって分かってて、俺らが四人で仲良いから許せるやつ?」

「あー、華じゃない女の子にやったら往復ビンタとケツバットかも」

「往復ビンタバットじゃないだけ良かった」

 正直に言えば、あたしは嫉妬心が大きい。それほどに彼のことが好きなのだ。大樹くんも華も親友で、大好きだから許せるのであって、それ以外の人間は許せない。彼があたしのお母さんのエゴマの葉を手伝うのだって許せないと思う。

 しかしどうやら、あたしの思考はまだマシな方だったらしい。顎に手を当てて何やら考え込んでいた彼は、少し待ったところで「俺は無理」という結論を出した。

「え、今の考えてた時間は何?」

「いや、どのパターンなら許せるかなって考えてたけど、そもそも一緒に食う時に隣か前に座らないと手伝うことにならないじゃん? めぐの隣に大樹が座るのは意味わかんないし、大樹がめぐの顔見ながらご飯食べてるのも許せないから、普通に考えて許せなかった」

「嫉妬心の塊すぎる」



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