03.トントン
明日は朝早くから用事があるらしい。
珍しく俺より先に寝る準備を始めた嫁さんを見ていれば、しゃこしゃこと歯磨きをしながら、手帳とにらめっこをしていた。そんなにハードスケジュールなのかと思ったけれど、どうやらスケジュール内容がハードなわけではなく、予定のすぐ横に書かれた『5:00』という数字を睨んでいたらしい。
手帳の向こう側、予定を組んだ相手は今頃、テーブルに足の小指をぶつけていることだろう。
「もう寝るならトントンする?」
「は? 別の部屋で寝て」
「ごめんなさい」
話しかけるタイミングをミスったらしい。拒絶どころのレベルじゃなくて、俺の気分が急降下する。怒られたからではない。怒らせてしまったから。まさか自分がこんなにも嫁ラブな人間になるなんて、彼女と出会うまでは想像もしていなかった。
そんな嫁ラブの俺が、たった一言の拒絶で諦めるはずなどない。というか、これくらいのドライさはいつも通り。本当に甘えたい時こそ素直じゃないことは、俺が一番よく知っているのだ。
いつものように毛布に潜る彼女。その横に寝転がって、勝手に体をトントンと優しく叩く。そうすれば、あとは擦り寄る彼女を抱きしめて、眠りに落ちるのを待つだけ。
唯一の問題は、珍しく甘えたな彼女に俺の理性が耐えられるかどうか。
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