02.脱ぎ散らかす男

自分で言うべきことではないのかもしれないけれど、俺は多分、もしかしたら、だらしないと言われるジャンルの人間なのかもしれない。

片付けが全くできないとか、清潔感がないとか、そういう類の話ではなく。結論から言うと、脱いだ服をどうこうするという習慣がないのだ。上着はハンガーにかける、だとか、脱いだ服は洗濯カゴに入れておく、だとか。何度嫁さんに怒られたことか。

しかし、ふと気がついたのだ。いつの頃からか怒られなくなっていたこと。そして、俺が片付けずとも嫁さんが片付けてくれているということ。

「ただいま」

「あ、おかえり」

今日も今日とて、嫁さんが俺のコートをハンガーに掛けている。っていうか、俺の嫁さん、出来る女すぎでは。

「なんかこういうの、出来る奥さんって感じする」

「ん?」

「服の片付け、いつもありがとな」

下心はない。いつもの感謝の気持ちを口に出しただけ。しかし、どうやらそれが間違っていたらしい。

途端に嫁さんの顔から表情が消え去り「は?」と一言。それから。

「誰かさんが脱ぎ散らかすからやってんの」

「ごめんなさい」

静かなトーンで怒られるのが一番怖い。



220112

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