10.取調室

真っ暗な部屋。ダイニングテープルの上に置かれたスタンドライトだけが、テープル上に置かれたカツ丼を力強く照らしている。

時刻は七時を少し過ぎた頃。がちゃり、と玄関の鍵が開けられた音がして、それから彼の足音が近づいてきた。既に違和感を感じているらしい。いつもの明るげな足音ではない。

かちゃ。そっとリビングのドアが開く。その場所から、今現在あたしが居るこの場所は視覚。蚊の鳴くような「ただいま、」という声からも、彼の不安が伝わる。

「ひっ、」

まさか、こんなところで彼の悲鳴を聞くことになるとは思わなかった。あまりはっきりと見えないけれど、彼の表情が固まってしまっていることは、何も見えずともわかる。

「座って」

「はい、」

「どうしてこういうことになってると思う?」

「……一応、確認なんだけど、刑事ドラマでも見た?」

「それが答えじゃないことくらい、わかって聞いてるでしょ?」

「う、」

席に着くと、彼の表情がしっかり見える。罪悪感を抱くとすぐに目が泳いでしまうのは、彼の弱いところだ。きっと、彼はこの状況を生み出した原因をいくつか思い浮かべていることだろう。

昨日の夜のせいで腰が痛むこととか。そんな中でも掃除をしていたのに、ソファーの下からえっちぃ本が出てきたこととか。その本が巨乳特集だったこととか。さて、どの罪から聞き取り調査を始めようか。



210109

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