11.コレ行こうぜ
「今日、コレ行こうぜ」
いつもより少しだけ低い声と、ウザ……カッコいいキメ顔。親指を立てて口に運ぶ仕草から察するに、飲みに行こう、ということだろう。わざわざそういうクドイことをしなくても良いのだけれど、そういうバカっぽさが彼らしくて愛おしい。
二つ返事で「行く」と紡いで、適当な服に着替える。いつものジーンズに、オーバーサイズのパーカーでいいだろう。きっと近所の居酒屋だろうし、今更誰に見られても恥ずかしくない。
と、思ったのに。
「あれ、居酒屋じゃないの?」
「うん? あ、すいません。グランデバニラノンファットアドリストレットショットアド——」
「急に呪文唱えるのやめて」
何故か訪れたのは有名カフェ。しかも、オシャレ女子が多め。今更誰に見られても恥ずかしくない、なんて思っていた十分前の自分を心の中で殴り倒している。
というか、彼のキメ顔とポーズはなんだったのか。あれは完全に可愛い女性を居酒屋に連れて行って、そのままホテルに連れて行く男性のソレだったじゃん。しかも、社会に出てからある程度の経験を積んだ方々のやつ。
お気に入りのものを注文できたのだろう。ホクホクしている彼を見て、本気で思う。
「ねぇ、なんで結婚できたの」
「嫁が言うセリフじゃないね?」
220110
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます