11話 バレンタインデー&お互いの方向性

 3学期があっという間に過ぎる。もう2月...。後1ヶ月でシャルとも...。いやいや、残りの時間を楽しめばいいだろ! くよくよするな。




 毎日シャルと一緒に学校に通い、一緒にお昼を食べて、一緒に帰る。もっと変化をつけてもいいのだろうか? そんなことを考えていたらバレンタインデーの日になった。男なら誰しもがチョコがもらえるかもって考えてしまう日。俺もシャルからもらえるとは思うから期待して待つ。




 学校に行くと森本と伊藤に呼ばれてチョコをもらう。




「一ノ瀬あげる! いつもありがとう! これからもよろしくね」




「あぁ。サンキューな。これからも宜しく!」




 朝森本と伊藤からチョコをもらってからチョコをもらっていない。あれ? なんでだ? シャルからもらえると思っていたんだけど...。




 お昼休みに話したことのない人からチョコを渡されて




「好きです。お友達からでもいいので付き合ってください」




「ありがとう。でもごめんなさい。彼女がいるんだ」




「はい。わかっていました。でも気持ちだけでも伝えたかったので...」




 そう言って走ってどこかに行ってしまった。こんな時経験豊富なやつはどんな対応をするんだろう。俺はなんて声をかけていいかわからなかった。




「は~...」




 そのまま放課後になると、楓先輩と優花さんに呼ばれて廊下に出ると、チョコをもらう。




「今後も宜しくって意味でのチョコね! これは七海先輩からね」




「ありがとうございます」




「それでだけどチョコは何個もらったの?」




「先輩たちのを合わせたら6個ですね」




「多い!! さすがだね」




「そんなですよ。ほぼ義理チョコですね」




「ほぼってことは本命もあったってことだよね?」




 楓先輩ってこういうところは鋭い。いつもはのほほんとしているのに...。




「まあそうですね」




「なんて答えたの?」




「彼女がいるので無理ですって言いましたよ」




「まあそうだよね~。じゃあまたね!」




「またね。大輔くん!」




「お疲れ様です!」




 楓先輩と優花さんと別れて教室に戻るとシャルが一人で俺を待っていた。その光景を見た時、一瞬見とれてしまって立ち止まってしまった。日光がシャルの髪に反射しているのがすごくきれいだった。




「待たせてごめん」




「いいよ。それよりチョコ渡してなかったね。はい、これ!」




 シャルからチョコをもらった。もらえたことに対してホッとする気持ちもありつつ、シャルが俺にチョコを渡した時の顔を見て不安にもなった。




「ありがとう。それよりどうした?」




「何でもないよ! それより食べてみてよ!」




「あぁ」




 箱を開けてみるとガトーショコラが入っていた。形もしっかりしていておいしそう。一口食べる。程よい甘さになっていて俺好みになっていた。




「おいしい」




「うん。だいくんのために作ったからね。そう言ってもらえてうれしい」




 俺がその場ですべて食べ終えてシャルに話しかける。




「ご馳走様」




「いえいえ」




「それでだけど、どうした?」




「え? 何が?」




 今もそうだ。隠しているだろうけど顔を見ればわかる。すごくつらそうな顔をしている。




「話せないならいいけどさ、話した方が楽になるときもあるよ?」




 するとシャルが泣き始めながら俺に言い始める。




「そうだね。バレンタインデーが終わったってことは後だいくんと一緒に居れるのも後1ヶ月なんだなって思ったら、毎日がつらくなってきてさ。明日が来てほしくない。だいくんともっと一緒に居たい。もっといろいろなことがしたいのにって思ったら...」




 俺はシャルを抱きしめながら言う。




「俺もそうだよ。だから俺も考えていたんだ。後1ヶ月しか会えないんだったら、俺がイギリスの大学に進学すればいいって思ってさ。そしたら毎日会える。だから後2年待っててくれないか?」




 ここ最近俺が出した考えの結果がこれだ。普通は海外に行く時は言語の壁があって行きづらいが、俺は英語が話せるしそうではない。それに加えて勉強も得意の方。だからイギリスに行ってシャルと一緒に勉強をして、その勉強が活かせる就職先を見つけようと思った。




「うん。ちゃんと考えてくれていたんだね」




「あぁ。だからシャルも勉強頑張れよ? 同じ大学行きたいからさ!」




「それはこっちのセリフだよ! でもそうだね。そう考えたら待てるかもしれない」




 話し合ってお互いの行く道を決めた。だからこれからはお互いが違う場所になっても、また同じところにたどり着くと信じているから...。


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