番外編7話 一ノ瀬未海の視点
今日、兄さんと半年ぶりに会える! どんな感じになったかな? 記憶が戻って昔の兄さんに戻っているのかな? それとも今まで通りの兄さんかな?
兄さんに褒めてもらうために勉強も頑張った。かわいいって言ってもらうためにメイクも覚えたし、おしゃれもした。
兄さんと会ってなんて話せばいいんだろう?
目の前に兄さんが来ると声が出なかった。好きな人が目の前にいる。それだけでこんなに震えることなの? すると兄さんから話しかけてくれる。
「あけましておめでとう。今年もよろしく」
「うん。今年も宜しくね」
「兄さん。勉強教えてよ」
「いいぞ」
私がそっけなく言うも、兄さんは優しく返答してくれる。
勉強を教えてもらうも全然頭に入ってこない。いつもなら解ける問題も解けない。ついつい兄さんに目が行ってしまう。そんな時間を2時間続く。その時間で世間話をするが、全然私のことを褒めてくれない。こういう所の兄さんは嫌い。
勉強が終わり、夜ご飯が始まる。ママたちが騒いでいるのが聞こえてくる。
「大輔くん彼女できたんだって! おめでとう!」
その言葉を聞いて私は頭が真っ白になった。兄さんに彼女? 夏休みの時はいないって言ってたけど...。私は正気に戻るのに少し時間がかかったが、本人に真実を聞くまで受け入れたくなかった。私は兄さんの隣に行くと兄さんはニヤニヤしながらスマホをいじっていた。
「兄さんニヤニヤしててキモい」
「ひどくない!」
「もしかしてだけど彼女できた? さっきママたちが話してたの聞こえて思ったけどさ」
「まあそうだな。彼女できたよ」
その返答を聞いたところで私の初恋は終わったんだなって思った。でも兄さんには兄さんの好きな人がいるのだから私が邪魔をしちゃいけない。それに従妹が告白をしたところで気持ち悪いだけ。だから気持ちは抑えておこうと思った。
「そっか。おめでとう...。」
「おう。未海もかわいいしすぐに高校に入ったらできるよ」
「私は彼氏、いらないかな? 後、私偏差値も上がったからもうちょっと上の高校を目指そうと思う」
でも兄さんに彼女がいるなら同じ高校に行かなくてもいいと思い、すぐさま兄さんに言ってしまった。その時の兄さんが複雑そうな顔をしていた。でもこれは私にとって一歩踏み出すところだから。
私は庭に行き小さくうずくまりながら泣いた。数分立ったところでママが来る。
「どうしたの?」
「何でもない」
「大輔くんに彼女ができたこと?」
「え? なんで...」
「娘のことなんだからわかるわよ。気持ちは伝えなくていいの?」
「従妹が気持ちを伝えたって気持ち悪いだけじゃん!」
「それでも言うのと言わないのとじゃ全然違うわよ? 好きって一回でも言ってみたら?」
「...」
すこし黙りながら考える。ママのいうことも一理ある。だから。
「兄さん。好き」
「俺も未海も修也も美香も好きだよ」
「うん。ばいばい。彼女さんにはいろいろと褒めてあげてね!」
「あぁ!」
ちゃんと気持ちを伝えた。伝わってなくても私の口から言った。それだけで心のどこかがスッと楽になる。
「未海ちゃんと言ったのね」
「うん。ママありがとう」
「どういたしまして」
家に帰ってママに向かって泣いた。泣いたおかげて前を向けそうな気がした。
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