5話 彼女の部屋
16年間で初めて彼女ができた。彼女ができて嬉しいのだが、1時間後には彼女の家にいるだろう。ちょっとハードルが高すぎませんか? 彼女になってくれたのが幼馴染だとしても、今までと心構えが違う。
今隣で歩いている子---シャルはどんな心境なんだろう?
「大くん。緊張しているのですか? 何度か私の家に入ってるじゃないですか」
「そうだね。でもやっぱり緊張するよ。今までは友達としてシャル家にお邪魔していたけど、今は違う。彼氏としてお邪魔するからね」
「そうですね...。そこまで考えていませんでした」
俺が言った後、シャルは顔を赤くしながら俯く。今のシャルを見ていたら、可愛すぎて抱きしめたくなった。付き合えて本当に良かった。
「今日シャルの家に行って何するの?」
「夜ご飯でも食べませんか? 大くんの家も誘ってですけど」
シャルの提案に二つ返事で答えた。
「いいね!」
「はい! じゃあ30分後に私の家に集合でもいいですか? 大くんの家族にも伝えといてください!」
「了解!」
話が終わり帰宅する。居間に向かうと母さんがいた。
「母さん。今日シャルの家でご飯を食べようって話になったんだけど、母さんと父さんもどう?」
「あら。そんなに仲良くなったの? 私は良いわよ。お父さんも帰ってきてから向かうように連絡しておくわ。何時に向かえばいいの?」
「30分後集合になってる」
「早すぎない? 私は間に合わないから遅れていくわ」
「了解」
「それで大輔とシャルちゃんは付き合ったの?」
なんでまだ報告してないのにわかるんだ? そんな顔に出てたか? なんにしても妖怪だな。
「さっき付き合うことになった」
「やっと彼女ができたのね! でも大輔にシャルちゃんはもったいないわ」
俺だってそう思っているよ。平凡な俺と誰から見ても美少女のシャルが付き合うなんてつり合ってない。だからこそつり合う男になるように努力する。
「俺だってわかってる。でも付き合えたんだからシャルの理想の彼氏を目指すよ」
「それは違うんじゃない? 今の大輔を好きになってくれたんでしょ? 今のままでいいじゃない。変に変わると逆に嫌われるわよ」
母さんの意見も一理ある。今の俺を好きになってくれたんなら、変わる必要はない。でも俺としてはシャルとつり合う男になりたい。どうしたほうがいいんだろう。
俺が沈黙していると
「まあおめでとう! 着替えてシャルちゃん家に早く行ってあげたら? 愛しの彼女が待っているわよ!」
「わかってるよ。母さんも急いでよ」
「はいはい」
俺は自室に行って着替をする。冬服もこの前買ってたので、それに着替えてシャルの家に向かう。シャルの家に向かおうとしたところで結衣のことが頭によぎる。
俺も失恋したからわかる。振られた日は涙が枯れるまで泣くし、力が抜ける。振ったことに後悔はない。だけど今までの関係に戻るまでに時間がかかる。友達としてやっていけるかで、心にシコリが残った。
インターホンを押すと私服姿のシャルが出てきた。ローズ柄のエレガントに、長袖シフォントップスとワイドパンツのセットアップ。
「さっきぶりだね。似合ってるかな?」
かわいすぎて言葉が出なかった。大人っぽい服装で、色気が出ていた。
「感想とかない?...」
「ごめん。見とれてて言葉が出なかった。すごく似合ってるよ」
俺が答えると無言で手を掴まれて家に招かれた。居間に入るとソフィアさんがいた。
「やっとシャルと付き合ったね。大輔くんヘタレだから言わないと思っていたよ」
ヘタレなのはうすうすわかってるけど、ソフィアさんに言われると心に来る。
「俺も男なのでちゃんと言いますよ」
「そうね。カップルおめでとう!」
「ありがとうございます」
その後もソフィアさんと二人で話をしていたら、シャルが怒って部屋に行ってしまった。付き合ったばかりなのにシャルと話さないで、ソフィアさんと話してたら怒るよな。
ソフィアさんにシャルの部屋の場所を教えてもらい、部屋に向かう。
「ごめん。今からでもいいから話さない?」
「嫌です。大くんはずっと姉さんと話していればいいんです!」
「俺はシャルと話すために来たんだよ。ソフィアさんと話すために来たわけじゃないよ。だから部屋から出て来てくれないか?」
「でも家に来てからずっと姉さんと話していたじゃないですか!」
「少し話が盛り上がっちゃっただけだよ」
「カギは空いているので部屋に入って来てください」
シャルに言われて俺は固まる。まだ付き合って1日目だよ? それで彼女の部屋に2人きりで入るとかハードルが高すぎる。シャルの家に来るまでは家に入ること自体がハードル高いと思ってたけど、それと数段レベルが違う。
俺が立ち止まっているとシャルが心配そうな声で話し始める。
「部屋に入りたくない?」
「入らさせてもらいます」
シャルの部屋に入る。女の子の部屋って感じだった。部屋はピンク色で、ぬいぐるみが多い。
ベットの上で枕を持ちながら俺の方を向いている。
「前も入ったけど、部屋かわいいな」
「そうですか? 普通だと思いますけど。今度大くんの部屋にも入れてくださいね。昔断られてしまったので」
「もちろん」
「姉さんとずっと話していたことにまだ怒ってますからね! 大くんと話したくて家に招待したのに」
怒ってはいなさそうだけど、ちょっと悲しそうな顔をしながら俺に言ってくる。
「ごめんって。じゃあ何したら許してくれるの?」
すると顔を赤くしながら
「ぎゅってしてください」
と言ってきた。
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