9話 八つ当たり
朝起きても昨日岩下に言われたことが頭によぎる。岩下に告白されたんだよな...。今こんなことを考えても答えが見つかるわけではないし、学校に行こ。俺はそう思い家を出ると、すでにシャルロットがいた。え? 集合時間の30分前だよ?
「大輔くんおはようございます。 ちょっと早く出てこれないか連絡しようとしたところだったんですよ」
「そうなんだ...。」
昨日のことがあったから今日は一人で登校しようと思っていた。
「昨日のことを聞きたいのですが、その前にあの男の子が大輔くんかどうかをママに聞いてみました。」
母さんに聞くことをすっかり忘れてた。
「ごめん。俺まだ聞いてない」
「いいですよ。あの男の子が大輔くんだってママが言ってくれましたから!」
「そうなんだ。じゃあ幼馴染だね」
「はい! 幼馴染だからと言って何か変わるわけじゃないですけど」
ニコニコして言われたことは嬉しいが、今はそんなことより岩下のことで頭がいっぱいいっぱいだった。まだ家の前で話していたので
「ごめん。今日は一人で学校に行ってもいい? シャルロットが行った後で行くからさ」
「何でですか? 昨日のことがそんなに聞かれたくないのですか?」
ビクッとした。一瞬岩下の事を言われているかと思った。でも昨日のこととは、多分森本の事だろう。
「そう言うわけじゃないけど、今は違う理由で1人になりたいんだ」
「岩下さんの事ですか?」
「そうだよ」
「なんて言われたのですか?」
「いえねーよ」
と強く言って、後ろを振り向かずに学校に向かった。シャルロットは俺を心配してくれて言ってくれたかもしれないのに、俺は八つ当たりをしてしまったと後悔する。学校にシャルロットがついたら謝ろう。
みんなが学校に登校してくる。登校ギリギリでシャルロットも学校に来たので、俺は真っ先にシャルロットを廊下に呼ぶ。シャルロットは俺の事を見てビクッとした。ここまで怯えさせちゃったんだな。
「朝は本当にごめん」
「こちらこそ踏み込みすぎてしまいました。ごめんなさい」
お互いが謝ったが、やはりギクシャクしている。やっぱり怖かったよな。俺はそう思い
「少し距離をとろう。別に友達をやめるとかじゃなくて、お互い気持ちの整理がつくまでさ...」
「いや! 別に大輔くんが怖いってわけじゃない...。ちょっと怖かったけど私自身に失望してたの。だから距離を取るのはやだ!」
「そっか。本当にごめん。教室に戻ろうか」
教室に戻るとクラスメイトから変な視線で俺たちを見てきた。二人で席に戻ると優輝たちが
「どうしたんだ?」
「俺がシャルロットに八つ当たりしたから廊下で謝ってた」
「へー。じゃあシャルちゃんになにか謝礼をあげなくちゃね!」
「謝礼ですむならそれでいいけど、シャルロットの気持ち次第だと思う。」
「謝礼とはなんでもいいのですか?」
「俺のできる範囲内だったらなんでもいいよ」
「そしたら謝礼でいいです!」
すると森本が
「だいくんさ、昨日岩下さんと会ったんでしょ? 何かあった?」
森本まで聞いてくるのか。そう思いつつ
「あったけど、誰にも話す気はない」
岩下が勇気を振り絞って告白してくれたことを俺がみんなに言いふらしていいわけがない。
「そっか。じゃあ聞かない。でも岩下さんから聞くのはありでしょ?」
「岩下が言うならいいと思う」
「うん」
俺たちが岩下の話が終わってからすぐに授業が始まる。2学期に入ったからって、1学期と変わらずの授業風景に飽きていた。
放課後になって、生徒会室に向かう。すると隣のクラスの斎藤さんと会う。
「昨日ぶりだね。生徒会室に一緒にいかない?」
「はい」
二人で生徒会室に向かう。話をきいていると斎藤さんはスポーツが中学時代に陸上で県大会にでていたらしく、頭も学年で1位らしい。おれはこれこそ文武両道だなって思った。生徒会室に入ると生徒会長が
「二人で来たんだね! 今日から宜しくね。もう一度自己紹介をするね。生徒会長の柊湊だ。」
「宜しくお願いします。1年の一ノ瀬大輔です」
「同じく1年の斎藤優花です」
「二人ともよろしく。じゃあ今日は文化祭の仕事の説明をするよ」
「文化祭の仕事は部門ごとに分かれている。食品・展示部門、設営・企画部門で、食品・展示部門はクラスが展示物や食品売りの管理をしてもらう。設営・企画部門は文化祭の門作りと部活動や有志の人たちが行うドッチボール大会の企画を行ってもらう。二人にはどちらかに入ってもらって、部門の手伝いをしてもらう予定だ。」
「「はい」」
「食品・展示部門をやりたいです」
俺がそう言う。すると
「私はそしたら設営・企画部門でいいです」
その後は仕事内容を先輩から教わって斎藤と帰宅する。
「俺が先にやりたい部門言っちゃってごめん」
「別にいいですよー。私はどちらでもよかったので」
「そっか。お互い頑張ろうな」
「はい」
二人でその後はテストの話やスポーツの話をして帰宅した。家に着いてまずは母親に
「俺とシャルロットって昔よく遊んでたんだって?」
「そうよ! 前にも言ったじゃない? ご近所だって」
「それだけじゃわかんないよ」
「そうかしら?」
その後も俺の過去の話を聞くがイギリスにいたことなどすべてが思い出せない。だから俺は1つ決心した。
「母さん、父さん。来年に家族でイギリスにいかない? 向こうに言ったらイギリスにいた記憶が思い出せるかもだし」
「そうか。でも向こうにもう家はないんだよ。だから少しアレスと話してから決める」
「わかった」
話が終わってから部屋に戻る。生徒会にいた時はいっぱいいっぱいだったから岩下のことを忘れていたが、一人になるとやはり考えてしまう...。そろそろ俺自身で決心をつけなくちゃな。岩下と友達としてやっていくか、今後はもう話さないでやっていくか。そこらへんも少し時間がたってから岩下と話そう。
さっき父さんが言ってたけど、もしかして来年はシャルロットと一緒にイギリスに行く可能性があるかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます