第16話 凱旋
大森林防衛戦の翌日には王都へ帰還となった。本来の戦闘があれば負傷兵の処置や遺体の
そんな状況だったので直ぐに帰還準備が整い、翌日には王都への
王都では伝令のハーピーが既に防衛部隊の勝利を伝えているとのことで、大規模なパレードと今回の勝利の
正直なところではそこまで大袈裟にされては恥ずかしいという思いもあったが、クロスティーナが言うにはオーラスト王国の国民たちはこの侵攻に対してかなりの不安を
「火乃宮様、そろそろ王都に到着しますので準備をお願いいたします。」
王都に近付いたことを伝えてくれたクロスティーナだが、彼女はどこから持ってきたのか純白のドレスを
「わかりました。それにしてもクロスティーナさんのその姿は大変美しいですね。」
「あら、ありがとうございます。お世辞でもうれしいですよ。」
「いえいえ、本心からです。」
「ふふっ、安心しました。火乃宮様はここ最近張り詰めたような雰囲気でしたので、笑顔を見られてよかったです。」
聖母のようにこちらを
「それは・・・しかたありません、まだこちらの世界に招かれて10日程しかたってないですが色々あり過ぎましたから。」
「すみません、おっしゃる通りですね。今回の侵攻の
「それはとても魅力的ですね。その時にはお願いします。」
こんな軽口が叩けるのは今回の危機が
今乗っているビーグルは通常は人や物の輸送用だが上部が解放されるようになっており、こういったパレードにも使用されている。
今の私はオーラスト王国国王に
解放された上部に出ると、マクレーン団長と各騎士団の部隊長達が待機していた。オープンカーの様になった場所は高さも5メートル位あるので安全のために腰のあたりにロープを付ける。前方を見てみるとそこには王都の城壁がまじかに迫っており、その大きな門が開けられていてビーグルが入れるようになっていた。
既に先触れの伝令から伝わっているのか王都民たちが道の左右や家の窓から手を振っているのが見えてきた。そんな様子を見ているとマクレーン団長から声を掛けられた。
「それでは火乃宮殿、腰の剣を抜いて上に掲げていただけませんか。」
そう言われ腰の剣を右手で掲げるとマクレーン団長が緑の魔石を割りながら大きな声を張り上げた。
「皆の者、我ら防衛隊は悪魔の軍勢を打ち滅ぼして帰ってきた。魔獣たちは当初の想定よりもその力を増しており、厳しい戦いになることが予想されていた。だがしかし、ここに居る異世界から
・・・・・・・・
『おおぉぉ~~~~~~~~!!!!!!』
一拍の
『火乃宮様バンザーイ!オーラスト王国バンザーイ!』
遠くに見える人たちも一様に喜んでいるのはおそらく風の魔石を使うことで、拡声器のような役割があったのだろう。
これだけ多くの人の笑顔が守られたと考えれば、恥ずかしいながらも誇らしいものが湧き上がってくる。
そんな周囲の歓声にかき消されてクロスティーナの小さな呟きは私の耳に届く事は無かった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
side クロスティーナ
剣を掲げ民衆からの声に応えている彼の後ろで私は魔法を発動した。
「【鑑定】・・・・嘘っ!?」
私が見た彼のステータスはもはや手が付けられない状態となっていた。
名 前:火乃宮 蓮(ヒノミヤ レン)
レベル:160 体力:48000 魔力:-----
スキル:知識創造(限定開放)(付与可能)
称 号:統治者 開発者 死を運ぶ者 異世界の理を持つ者 救世の英雄 支配者 悪魔の
(なにこれ・・・レベル160!?世界でも有数の実力者の教皇様やマクレーン団長ですらレベル90台なのにありえない・・・心臓を貫いても完全に体力が0になるまで5分は掛かるじゃない。無理・・無理・・・。こうなってはもうその矛先が教国に向かないように慎重にならなければ。)
この世界での死の概念は体力が0になることか首を
指輪か何かで常に光魔石を身に着けておくのが一般的なので、暗殺しようとしても5分も
更にレベルが160もあればそもそも致命傷を与えたり首を
(各国の
今までの対応やその人柄を見てきて、彼の考え方やその優先順位がなんとなく見えてきていたクロスティーナはそう考えていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
パレードが終わり玉座の間へ案内するとメイドが伝えてくれた。そのメイドは以前クラリーネ王女の側にいたメイドで名前をユリ・ネーラと名乗った。
今後の王国からの連絡については、彼女が伝えるという事だそうだ。
着いた部屋は玉座の間の隣にある控え室のような場所で、今回の戦果に対しての褒美を
テーブルには貰い受けることの出来る目録が置いてあり、その中から3つまで選んで欲しいとのことだった。目録の隣には筆記用具が置かれており、これに記入して欲しいと言われた。
「お決めになりましたらテーブルにある鈴を鳴らしてください。では、失礼いたします。」
一通りの説明を終えたメイドのユリは退出していった。
目録には
(爵位や物は分かるが、人までとは凄いな。ただ、何を選ぶべきか分からない・・・クロスティーナに聞いてみるか。)
一緒に案内されていたクロスティーナに向き直り聞いてみる。
「すみません、クロスティーナさん。どの様な物を選んでいいか分からないので、少しお聞きしてもよろしいですか?」
「はい、もちろんです。」
「今の私は教会に保護されておりますので、アスタルト教国に所属している様なものだと思いますが、他国で爵位を貰うのは普通の事なのですか?」
少し驚いた様な表情をした後に質問に答えてくれた。
「それは大丈夫です。自国の貴族でありつつ、何らかの功績によって他国でも貴族の地位についている方もいらっしゃいます。名誉みたいなものですね。火乃宮様はオーラスト王国に所属したいのですか?」
先程の驚いた表情に納得しつつ、その言葉を否定する。
「いいえ、そういう事ではないのですが、今後他の国へも同じように訪れるかもしれませんので選択肢を増やせるならそうしておこうと考えたのです。」
「そうなのですね。・・・あなたは教国にとっても重要な方、いえ、この世界にとっての英雄になられる方です。どの国でもあなたは歓迎されますわ。」
「それほど大袈裟な人物になれるとは思わないですが、出来れば私も平和な世界で暮らしたいと考えていますので、善処しましょう。」
謙遜した態度をとっていたら、クロスティーナが近づいてきて両手を取られ胸元に抱え込み、力強く訴えてきた。
「火乃宮様はなくてはならない方であると私は考えております。どうかそのことは心に留め置きください。」
積極的な行動をしてきたクロスティーナに動揺しながら「ありがとうございます」と答えた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
クロスティーナの助言を受けながら結局、爵位と金銭、書庫への自由な出入りを求めることにした。
テーブルの鈴を鳴らすと直ぐに先程のユリがノックの後に入室してきた。
「お決まりになられましたでしょうか?」
「はい、こちらをお願いします。」
そう言いながら、要望を記入した用紙をメイドのユリに渡した。
「では間もなくご案内致しますので少々お待ちください。」
・・・・・・・・・・・
「火乃宮殿の此度の活躍は誠に見事であった。オーラスト王国ではこの功績に
「謹んで
先ほどメイドに渡した通りの要望が国王から読み上げられるが、第3位貴族はどの程度の立ち位置になるのか確認しなければならない。
「では、3日後に今回の勝利を祝う
「はい、ありがとうございます。」
感謝の言葉を述べながら、空いた時間にどうすべきか考えながら玉座の間をあとにした。
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