第9話 絡まった糸

勘太郎と本間は、東京を出る前に、神田明神にお詣りした。

本間には、わけがわかっていなかった。

『平将門の首塚ですよ。

 京都のんは、飛んできたっ

 て、言い伝えがあるだけの

 バッタもんですやん。

 ほやから、事件解決をお祈

 りしようと思って。』

首塚前殺人事件と事件の名前に入れた首塚とは、平将門の首が関東から飛んで来て、落ちたとされる場所で、怨霊を鎮めるために祠に祀り京都神田明神と名乗っている。

勘太郎の説明に、本間は吹き出して笑った。

『また魔界か・・・

 で、今度は、怨霊さんが犯

 人に導いてくれるというこ

 とかいな。』

『ハイ・・・

 今回の現場の前に、平将門

 さんの明神さんがいてはり

 ますさかい、ホンマもんがい

 てはるここでお願いしよう

 と思って。』

前回までは、怨霊が事件を起こしたと考えていた勘太郎が、今回は、怨霊に事件を解決してもらおうとしている。

本間につられて、勘太郎も笑いながら駅弁を買って、のぞみに乗った。

名古屋を出て、進行方向右側に

伊吹山が見えた頃、勘太郎の携帯が鳴った。

『勘太郎です・・・

 お疲れ様です、坂本さん。

 えっ・・・

 沖縄やない・・・

 わかりました。

 ハイ・・・

 お願いします。』

『警部・・・

 ヒョウモンダコの産地、七

 奈美さんの胃に残っていた

 ヒョウモンダコの唇に付着

 していた海水から、沖縄や

 ないことだけは確実やそう

 です。

 これから、産地の特定に入

 ってもらえるそうです。

 これで、最悪のシナリオは

 避けられましたね。』

ほっと、胸を撫で下ろした表情の勘太郎。

本間は、少し難しい表情。

『けど、どうやって産地の特

 定するんやろう。』

至極当然な疑問を口にした。

『科捜研には、全国の海水の

 データベースがあるんやそ

 うです。

 すでに、若狭湾のどこか

 というところまで、判明し

 てるんです。

 細かく、漁港までわからへ

 んか、やってもろてます。』

本間は、肘掛けに肘を突いて、頬杖をついていたのが、ガクンと落ちて。

『我が京都府警察科学捜査研

 究所とは、どんだけ優秀や

 ねん。』

おそらくは、全国都道府県の警察の科学捜査研究所や鑑識との情報交換であろう。

『警察庁の科学捜査データベ

 ースですよ。』

坂本は、簡単に言ってのけた。

捜査本部は、右往左往していた。

本間と勘太郎は消える、坂本から、ヘンテコりんな情報がもたらされる。

木田が、治めようとドタバタしているが、小林では、役に立たない。

『どないした。

 えらい楽しそうに騒いどる

 なぁ。』

本間と勘太郎が、会議室に現れると木田はヘナヘナと崩れて、小林は、ベソをかいている。

『みんな、驚かしてすまん。

 ちょっと、捜査資料のこと

 で警察庁に行ってきた。

 で、科捜研の坂本君に、あ

 ることを依頼してたんや。

 その結果が、儂らより先に

 届いたらしい。』

本間と勘太郎が、緊急で、水田代議士に会いに行ったことは、誰にも告げていなかった。

『まったく、警部も勘太郎も

 心臓に悪い。』

木田は、まだ床に膝を突いたままの姿勢。

勘太郎が、事の経緯を説明して、ようやく捜査本部が、落ち着きを取り戻した。

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