第144話 トレーナ会戦 後編 2
「かかれー!」
カルドナ王国軍第125混成団の中央より少し後方に位置する銃歩兵連隊右側面から突撃を敢行した、ウェスバリア軍第19騎兵師団師団長マクシミリアン=レイモン・ド・クロワザ少将は、部隊の戦闘に立ち、大きな号令を放つと共に、副官のシャプケ中佐を伴い、迫りくる敵にその大剣を振るった。
「閣下!!敵弓兵連隊に突撃をご命令下さい!」
クロワザ少将は、シャプケ中佐の進言通り、自身の師団の最後尾に位置する第44騎兵連隊に、敵最後尾である弓兵連隊への即時突撃を命令。
この命令により、第44騎兵連隊は突撃準備状態である前面の45連隊から少し外れると、最後尾から一気に駆け上がり、敵弓兵連隊の側面を突いた。
敵のカルドナ王国軍第125混成団と、第8銃歩兵師団において、最も危険な兵科は大量に配備された銃歩兵である。
敵の伸びきった隊列先頭の約1/4前後は、重装歩兵連隊と共にヴェルティエ中将旗下の第29騎兵師団、第37騎兵師団総勢12900名の守備する陣地に突入、後続のとの間にはギルマン中将旗下の第36騎兵師団16825名が突撃、最後尾から1/4程の地点では先に到達クロワザ少将の第19騎兵師団16520名が奮戦していた。
敵第125混成団と、第8銃歩兵師団の総数は約4万。
ウェスバリア第2軍第2軍団は数の上では上回っているものの、騎兵の単一兵科であるため、分が悪い。
更にカルドナ王国軍銃歩兵は軽装であるが、長い銃剣を着剣しており、近接戦闘に置いては騎兵に対してもある戦えるほどの装備である。
騎兵部隊の長所は突破力と機動力である。シャプケ中佐は事前にクロワザ少将、ギルマン中将へと策を施していた。
その策とは一定の犠牲を覚悟し、予備部隊を作り、突撃が終了した部隊は一定時間の交戦後、即座に突撃方向へと離脱、離脱開始と同時に後続が突撃を開始するという策であった。
この策は部隊自体が敵の陣形を駆け抜ける都合上、敵が縦隊陣形を取っている場合にしか通用せず、シャプケ中佐は現在の状況の様に敵が縦隊陣形になることを予想していたと考えられる。
しかし、カルドナ王国軍第125混成団ジョヴァンニ・メッセ少将は、何もせずに敵の策を受け入れる程愚鈍ではない。
何度かの突撃を受けた後で、弓兵連隊を見捨て、銃歩兵、重装歩兵に密集陣形を取らせると、この後日付が変わるまで幾度となく繰り返される、敵騎兵の猛攻を受けた。
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話しは主戦場へと戻る。
ウェスバリア第2軍最左翼第9騎兵師団は苦境に立たされていた。
敵の数が少ないと知り、師団長であるシャルパンティエ少将が要求した、突撃支援射撃の回数などに起因する。
突撃し、敵の中央を突破した第9騎兵師団は、残敵である第72騎兵師団に再度突撃を敢行。しかし、第72騎兵師団隣接部隊である敵第13銃歩兵師団からの銃撃を受け、軽装であったがゆえにその銃弾を右側面に直撃、第9騎兵師団右側面からは多数の脱落者が出た。
シャルパンティエ少将はこの前段階で比較的重装である第109騎兵連隊を敵弓兵連隊へと分断作戦をとっており、銃撃から自身の騎兵師団守れないと確信に至ると、その銃歩兵師団から距離を取らせ、被害を最小限に食い止めようとした。
しかし、この動きをカルドナ王国軍第3軍司令部は見逃さななかった。第13歩兵師団の正面は第24歩兵師団と第22歩兵師団の半数である。重装歩兵連隊、弓兵連隊で戦線を一定時間維持できると確信した司令官アンプロージョ少将は、重装歩兵連隊を前面に、後背に弓兵連隊に後退させながら配置を変更すると、第72騎兵師団、第13銃歩兵師団の攻撃目標を、ウェスバリア第9騎兵師団主力へと変更させた。
損害の全く出ていない第13銃歩兵師団は、命令通り後退しながら、敵第9騎兵師団主力と、先行する第109騎兵連隊との間へ射撃を繰り返しながら割り込むと、被害を受けた第72騎兵師団と半包囲する形で、第9騎兵師団をその射程圏内に捉えた。
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