第142話 トレーナ会戦 中編 13

 右側面に配置された、直協2個大隊の延長線上に陣地展開していたキスリング支隊は、マイトランドの命令で試射を放つ。


ドォォォン。


 大きな音と共に、キスリング支隊の魔力火球1発が敵弓兵連隊の前方へと降ると、敵弓兵連隊の指揮官は手を上げ、連隊の行進を停止した。


「近!増せ300!」


 ランズベルクが08型で修正を求めると、マイトランドはそれを即座に砲班へと連絡、諸元の修正を完了した砲班は修正射を実施。

 即座に発射された次弾は、初弾と挟叉する形で、行進を止めた敵弓兵連隊の奥へと落ちることとなった。


「遠!引け100、効力射!」


 前進観測班であるランズベルクは、これ以上の修正射の必要をなしと認め、マイトランドへと効力射を要求した。

 マイトランドは、この効力射要求に全砲班へと諸元変更、射撃準備を整えさせ、射撃を命令した。


「各班砲撃用意!」


「用意よし!」


「撃て!」


 マイトランドが号令すると、1個連隊分の魔力火球が一斉に敵弓兵連隊へと降り注いだ。


「効果ありだぜ!」


「了解だ!効力射を実施後、陣地転換する。」


 敵弓兵連隊指揮官は、これに隊を分散させ対応するも、対空防御が無い状態の弓兵連隊は3個中隊を失うなど、甚大な被害を受け、しばらくの間統率を失った。


 マイトランド達キスリング支隊は、効力射を実施後、即座に陣地転換、その所在を再び隠蔽した。


 この砲撃を確認したウェスバリア第2軍司令部は、第11騎兵師団へと通信。トゥルニエ少将へと別働隊の存在を問いただすと、トゥルニエ少将は自身の直協部隊の砲撃と報告し、司令部の命令通り、突撃に移行した。


 この突撃を受ける第5重装騎兵師団は、第4軍総司令官アンプロージョ少将の師団である。司令部に鎮座するアンプロージョ少将の代理の指揮官である副師団長スピノラ准将は、この突撃に右翼を固める第18銃歩兵師団に突撃部隊への射撃を要求した。


 第18銃歩兵師団は左翼部隊1連隊をウェスバリア第11騎兵師団へと向けると、突撃を破砕するため、斉射準備にかかった。


---


 さて左翼の第9騎兵師団であるが、敵魔導砲兵の突撃破砕射撃を軽微な被害に抑え、後退する敵第72騎兵師団へと到達すると、突撃の勢いで勝る第9騎兵師団は敵前列を壊滅に追い込み、敵師団の中央を突破する形で突撃を成功させた。

 第109騎兵連隊は命令通り敵弓兵連隊へと突撃を開始、シャルパンティエ少将指揮する主力は反転再度の突撃を開始するべく突撃準備へと移行、第73魔導砲兵旅団に突撃支援射撃を要求した。


---


「閣下!大変です!敵の秘密兵器と思われる物が飛来しております!」


「おい!アレはなんだ?敵の空戦部隊か?」


「空戦部隊にしては大き・・く・・ないでしょうか?」


 カルドナ王国軍第3軍第12軍団軍団長ウンベルト・ソッドゥ中将は空中を浮遊する物体を目視により発見。詳細を前哨や、対空魔法兵に確認させた。

 この浮遊物の正体は、帝国軍第17軍団ヘルマン・フォン・クラウゼン中将が放った帝国軍の秘匿兵器であり、最近戦闘用の実用化に至ったルフトシッフと呼ばれる魔導飛行船であった。


 ウンベルト・ソッドゥ中将は、直ちに第3軍司令部へ報告、第3軍司令部は全軍への対空警戒、防御を厳に命令した。


「敵は今頃青くなっておるだろうな。」


 帝国軍第18軍団ガーランド少将はこのルフトシッフによりカルドナ王国軍第12軍団の所在を確認し、ルフトシッフへと通信した。


「我、ただ今より魔導砲撃を実施する。射弾の観測を求む。」


「こちら空中観測班、射弾の観測了解。砲撃を実行されたい。」


 敵カルドナ王国軍第12軍団の陣地手前で計画を変更、第18師団、第53師団の魔導砲兵連隊に射撃準備を開始させた。


「敵は多いのだ、大まかな諸元でよい。効力射による修正を行う。各魔導砲兵連隊は効力射準備をせよ。」


 第18師団及び、第53師団の魔導砲兵連隊が準備を終えると、ガーランド少将は射撃指揮所に射撃を命令した。


「各魔導砲兵連隊は斉射を開始せよ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る