第135話 トレーナ会戦 中編 6
「閣下、伝令が戻り、別働隊第2軍団ヴェルティエ中将からの報告が参りました。」
「そうか、通せ。」
ツェッペリン大将は、連絡の無い第2軍団からの報告を首を長くしながら待っていた。
「報告いたします!我第2軍団、圧倒的優勢。既に敵の半数を撃破壊滅せり。敵の守備隊は残り3万ほど、こちらの損害は皆無。これよりチェニスキー河東岸の敵守備陣地を攻略する。とのことであります。」
ツェッペリン大将は、この報告に気を良くすると、伝令に訪ねた。
「そうか、そうか。第2軍団は兵の士気もさぞ高かったであろう?」
「はい、それが、軍団最後尾第37騎兵師団は、思いのほか疲労している様子でございました。」
「うむ。ヴェルティエ中将は部下を酷使するところがあるからな。疲れていて当然であろう。もうよい、下がれ。」
「ははっ。」
伝令の兵士が総司令部を出て行くと、各師団長を招集、ツェッペリン大将は自身の幕僚に意見を求めた。
「流石は今回の計画立案者ヴェルティエ中将と言ったところか。これで北門攻撃隊は安泰であろう。後は我々主力部隊が敵主力との戦いをどうするかであるが・・・。」
「はい。斥候の報告によれば、既に敵主力はスーザを通過、あと1日ほどでウルクスに到達するかと思われます。」
「我が軍はどうであるか?」
「はい。我第2軍主力は、本日中にウルクスに到着致します。兵に十分な休息を取らせた後、戦闘に臨むことが可能でございます。」
「敵よりも圧倒的に有利ではないか。」
「はい。既に主戦場はくまなく偵察を放っており、圧倒的に有利な状況で戦闘を開始できるかと。」
ツェッペリン大将は、頷くと自身の参謀に各師団の指揮を任せた。
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さて、帝国軍第18軍団は、ガーランド少将の指揮の元、敵第8銃歩兵師団陣地を攻撃、陣地を守備する1個大隊、増援である敵1個騎兵師団と交戦、帝国軍第18軍団の3個魔導砲兵連隊による、3交代の昼夜問わずの砲撃で、カルドナ王国軍第12軍団の戦力は激減していた。
「こちら前進観測班、敵兵舎、初弾命中。初弾命中!同一諸元に効力射!」
「こちら射撃指揮所、効力射了解!」
射撃指揮所の命令で、多数の大きな魔力火球が敵の兵舎を目がけ飛んでいくのを確認すると、指揮官ガーランドの心は少年の様に踊った。
「射撃指揮所、前進観測班に通達せよ。これより第18軍団は全銃歩兵、猟兵、竜騎兵による突撃を敢行する。各魔導砲兵連隊は突撃支援射撃の体勢を取れ。」
通信員が射撃指揮所、前進観測班、に通達すると、すぐに突撃支援射撃の準備にかかる。
「こちら射撃指揮所、各前進観測班、これより突撃支援射撃の試射を行う。目標は敵正面塹壕。」
「「了解!」」
射撃指揮所の指示で、3発だけ発射された魔力火球が敵の正面の塹壕手前に落ちると、各前進観測班は偏差を図り、射撃指揮所に報告した。
「こちら前進観測班。近、近、近。増せ100。」
これは3発が全て目標としていた地点よりも、100mほど近い距離に落ちたことを意味する。
「こちら射撃指揮所。増せ100了解。修正射。」
射撃指揮者が再び指示を出すと、又3発の魔力火球が敵に飛来した。
「こちら前進観測班。全弾命中。」
「了解。」
射撃指揮所は、軍団司令部に突撃支援射撃の準備完了を伝えると、全猟兵、銃歩兵、竜騎兵連隊に突撃の準備指示を出した。
「ガーランド閣下。第18軍団突撃準備完了いたしました!」
「よし、突撃にかかれ!」
ガーランド少将の命令は直ぐに各隊に通達され、突撃支援射撃が敵の正面塹壕に降り注ぐ。
「突撃にー!かかれー!」
左翼からは53師団が、中央からは18師団が、右翼からは30師団の突撃支援射撃に先がけ伏せていた竜騎兵、猟兵、銃歩兵の全てがその場から起き上がると、着剣した銃をもって突撃した。
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マイトランド有するキスリング支隊は、主戦場である、ウルクスの平地、南方にその陣地を決めると、砲撃陣地の構築をしていた。
「キスリング大佐。ついに我々の最初の出番ですが準備はどうですか?」
「ああ、夜明け前には陣地の構築は完了する。試射はマイトランドとランズベルク隊で行うのだったな?」
「はい。試射は試射と思われないよう出来るだけ陣地を秘匿したいと思います。効力射後は即座に陣地転換。第2陣地に移動を命令してください。」
「わかった。」
夜明け前、キスリング支隊各砲班は準備を完了すると、マイトランドは主力が交戦するまで支隊に休息を取らせた。
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