第91話 戦闘準備 1

 翌日になって、マイトランド達は早速行動を始めた。


「ランズベルク、俺の帝国軍の軍服を着て、3~4日ほど帝国軍正面の敵軍団を、色々な場所で敵に見つかるように偵察してくれ。交戦は絶対に避けてくれ。これは危険な任務だ、お前にしか任せられない。頼まれてくれるか?」


「いいけどよ、なんでだ?」


「気休め程度ではあるが、敵に帝国軍の大規模攻撃を匂わせる為だ。帝国軍正面の敵部隊を、帝国軍に張り付けておこう。」


「ああん?実際に帝国が動かないんじゃ意味がねえだろうよ。」


「その辺は大丈夫だ。昨日お前の名前で、仲間に手紙を送っているからな。ああ、後、言い忘れたが俺とポエル、アツネイサ、それにアダムに支援魔法を付与しておいてくれ。」


「なんで俺の名前なんだ?まぁいいか。手は打ってあるんだな。ならすぐに出発するぞ。」


「ああ、頼んだ。遅くとも4日で戻ってくれ。」


 マイトランドがそう言い終える前に、ランズベルクは準備の為かその場から立ち去ってしまった。

 ランズベルクが出て行くのを確認すると、マイトランドはポエルとアツネイサを向き、それぞれに任務を伝えた。


「ポエルはスキルを使いつつ敵情の観察、アツネイサは主戦場となるトレーナの平原のチェック、俺はトレーナ城を直接見に行く。アダムは少し離れたところで待機して、アツネイサ、ポエルが戻ってする報告を、逐一イブラヒムに羊皮紙に書き写させてくれ。」


「了解。」


「リョウカイ。」


「了解だ。」


 ポエルと、アツネイサ、アダムスが次々に返事をすると、今度はミシェル、トーマス、セリーヌを向き、任務を伝える。


「ミシェル、セリーヌ、トーマスは、今日と明日で、今回の攻勢作戦に参加する各部隊、各師団を、協力して巡り、訓練の内容と司令官の人となりを、じっくりと詳細に調べてくれ。それともう一つ、戦線前面に配置される、重装歩兵師団の各連隊及び大隊の練度を見てきてくれ。実戦経験のないウェスバリア軍だ、最後の最後まで訓練をするだろう。俺が明後日に戻るまで観察しといてくれ。」


「「「了解した。」」」


 同じ新兵であるが、ドワイト分隊で言えば、3名は新参だ。もちろんのこと分隊加入までマイトランドの事は全く知らなかったが、先の敵連隊規模の撃破で、マイトランドの事を認める様になっていた。


「俺は何をしたらいいか?昇進の為には、なんでもさせてもらうぞ?」


 イブラヒムを除き全員に指示が終わると、ドワイトがマイトランドに嬉しそうに尋ねた。


「分隊長は・・・。そうですね。最悪はこの兵舎になりますが、イブが待機できる場所を探して下さい。その後は、そうですね。この後紹介される、我々付き1個砲兵連隊の射撃練度の確認、それから、連隊長である大佐か中佐との渡りをつけて下さい。」


「わかった。それで?今回成功したらどれぐらいの功績になって、俺はどれくらいまで昇進できるんだ?准将を味方につけたんだ、前回のお前の功績と合わせて、大尉ぐらいまではいけそうか?」


「はい?帝国の様に、十字賞がもらえる訳ではないんですよ。そんなに一気に昇進できるわけがないでしょう。さしづめ少尉がいい所でしょう。あとは成功してみて、准将の裁量の範囲内ってとこですよ。新兵教育で一階級上がったのも奇跡だっていうのに。」


「そうか。うん。少尉か。ドワイト少尉か。良い響きだ。30で少尉なら、あの方に言われて騎兵兵科に兵科転換した甲斐もあったってもんだ。妻もきっと喜ぶぞ。」


 そう言うと、急に笑顔になり、マイトランドの肩掴んだ。

 マイトランドは、あの方を誰か気付いていたが、そんな事よりも、こんな性格のドワイトが結婚していた事に驚き、強く掴んだ腕を振りほどくとドワイトに尋ねた。


「あんた結婚してたのか。」


「お前、隊長に向かって、あんたとはなんだ。」


「いや、ちょっとびっくりしたんで。新兵教育を終えたあたりから、分隊長なんかおかしくないですか?こんな性格だったかなと思ってはいたけど、変わりすぎじゃないですよ。」


「厳しかっただろう?新兵教育とはそんなもんだ。」


 マイトランドが納得できずに、2人が話し終えてからしばらくすると、連絡員が兵舎に入って来た。


「ドワイト曹長、ラッセル2等兵は、至急私に同行し、旅団司令部へ参られよ。」


 ドワイトは先ほどの笑顔とは打って変わり、真剣な表情になるとマイトランドと共に、旅団司令部へと向かった。

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