第69話 部隊配置 2

 大同盟のメンバーを尻目に、新兵教育最後の機会だと、マイトランドにフレデリカが近づく。


「や、やあマイトランド。もう行かなければならないんだが、もしよかったら2人で話さないか?」


「ああ、いいぞ。」


「あの、その、私が士官学校を卒業したら、け・・・。」


 フレデリカがそこまで言いかけると、大同盟の盟主が突然大声で割って入る。


「あああああああああ!ああああああああああ!ああああああああ!」


「なんだどうした?フラン?」


「あっちで第1軍の前線部隊に配属になったライアネン君が出発するそうです!早く送りに行きましょう!」


「そうだな、フレデリカ、すまんな。またいつか話そう!」


「あ、ああ、またいつか・・・。」


 フレデリカは泣かなかった。


---


 ライアネン達の第1軍の出発は、名目が補充であるが故、他の部隊よりも幾分早い。


「ライアネン、第1軍は過酷と聞く。絶対に死ぬんじゃないぞ。」


「おお、マイトランドの下で働くまでは死なないさ。お前こそ死ぬなよ。」


「俺が死ぬと思うか?誰に言ってるんだ?」


 ライアネン達、第1軍の前線補充部隊を見送ると、次はトッド達の後方支援部隊を送り出す。


「クリス、あんた、あたいより先に死ぬんじゃないよ。あたいばっかり安全なところですまないね。」


「わかってるよ。姉さん。僕は大丈夫さ。」


 ジョディーとクリスが抱き合い兄弟の別れを惜しむと、マイトランドはクリスに、


「クリス、言っておいた件頼むぞ。」


「ああ、大丈夫。何かあったらすぐに連絡するよ。」


「トッド、ルーク、アルベルト、フィン、無事で。」


 クリスの返事を聞くと、マイトランドは、トッド達を送り出した。


 続いてロンベルト、アーシュライトを送り出すと、


 フラン達、第3軍の者達を送り出す。


「スナイダー、いい物を荷物に入れておいたぜ。困ったときは使うんだ。」


「通りで、荷物が重いと思ったら。ランズベルクありがとう!」


 何も知らないスナイダーが礼を言うと、マイトランドがランズベルクに尋ねる。


「ランズベルク、お前、何入れたんだ?」


「あ?ああ、フリオニールの鎧だぜ。さっきそこに置いてあったからな。」


「お前・・・。それ泥棒って言わないか?」


「まあ俺が持ってるわけじゃないし、いいだろ?フリオニールも鎧くらいで怒らないぜ。」


「それもそうか。」


 2人が笑っていると、フランがマイトランドに近づいてくる。


「マイトランド君。行ってきます。同期会楽しみにしていますね!」


「ああ、フランにも手紙を書こう。それと、移動中に皆に伝えてくれ。第3軍は次期に戦闘になる。我々ウェスバリアは海洋国家なのに、海軍を持っていない。辛い戦いになるだろう。」


「ええ?そうなんですか?」


「ああ、間違いない。イドリアナがハイデンベルグ領に上陸できなければ、十中八九あるな。今はまだいいが、覚えておいた方がいいだろう。それに状況次第では、ガリア同盟も敵に回る可能性もあるぞ。」


「わかりました。伝えておきます。」


 フランはそう言ってポエルにチラチラ目をやると、両の手の平を合わせ、挨拶すると、他の者を伴い出発した。


 最後にアルファイマーがやって来て、マイトランドにこう伝える。


「出来上がった物は、配属部隊にそのまま送ればいいですね?」


「いや、グレイグに預けてくれると嬉しい。士官学校は首都だから大丈夫だろう?」


「はい、わかりました。グレイグ中将にお渡ししましょう。マイトランド君、約束は覚えていますか?」


「もちろんだ。いつになるかはわからんが、士官学校を卒業したら召集しよう。」


「ふふ、約束ですよ。」


 アルファイマーはそう言うと、他の新貴族と共に出立した。


「フリオニール来なかったな。」


「ああ、いいんだ。忙しいんだろう。それより俺達第2軍は、明日の出発だ。時間もあるし、グレイグの所に武器を取りに行くか。成績は発表が無かったから、約束は守れていない。とりあえずグレイグの所だけだな。」


「ようやくアレが使えるのか。馬はどうする?」


「馬は要らないな。初陣だ、部隊に配属されればもらえる馬を使おう。俺達は騎兵兵科だしな。それに気になることもある。」


「気になる?何がだ?」


「昨日の大本営発表だ。他の者の手前、話せなかったが、何かおかしいと思わなかったか?まぁグレイグのところについてから話そう。」


 そう言うと、二人は雑談を交えながら基地営門に向かった。

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