第67話 ウェスバリア第2軍現在の戦況
ウェスバリア南東、カルドナ王国との国境は、3000m級の険しい山々が両国の交通を阻害している。
カルドナ北西の街トレーナから、ウェスバリア南東の街グルナブルットにかけて僅かな範囲で平野が広がっているが、ここ以外の大規模軍の侵攻ルートは無いと言ってもいい。
僅かな規模であれば、グルナブルット南の沿岸部にあるウェリースという街から東に延びたルートが存在する。
ウェスバリア第2軍を率いるのは、38歳という若さで大将に上り詰めた、貴族院20名家の一つ、ツェッペリン家、その次代の家長、バルト・ハインリヒ・フォン・ツェッペリン大将である。
ツェッペリン将軍は、ウェリースにウェリース守備隊1個歩兵師団、1個騎兵師団、1個弓兵師団を配備すると、残りの全軍をグルナブルットへ駐屯させ、その中から、4個歩兵師団、2個騎兵師団、1個弓兵師団、1個銃歩兵師団を、先遣隊第1軍団として、平野部国境手前まで進めさせると、陣地構築の指示を出した。
ウェスバリア第2軍で第1軍団司令の職責を任されるのは、ツェッペリン将軍の右腕として名高い名将、ウィリバルト・ネイ少将。
新貴族の彼は陣地構築に適した丘陵を僅か半時で選定し、陣地構築も6日とかからず成功させた、陣地構築においては、ウェスバリア軍きっての名将である。
陣地構築完了後は、越境しないように、トレーナ方向に逐次斥候を出す。
20個の騎兵小隊を代わる代わる斥候に出すことで、兵の疲労を軽減し、カルドナ王国軍の動きを絶えず見張った。
これに対し、カルドナ王国軍はハイデンベルク帝国国境で戦闘中の第3軍、14個軍団の中から、騎兵第2軍団、重装歩兵第4軍団、銃歩兵第6軍団、第10軍団の計4個軍団をトレーナに向かわせると、新兵、予備役で編成した4個軍団を新たにハイデンベルク国境付近へと向かわせた。
トレーナに到着した、4個軍団に沿岸防備に付いていた、3個軍団を加えると、第4軍とし、トレーナと国境の守備にあたらせた。
ウェスバリア軍、カルドナ王国軍共に、国境付近でにらみ合いを続けるも、どちらも宣戦布告していないことから、戦争の火種になってはならぬと、両軍ともに全くと言っていいほど、動きは無かった。
だが、マイトランド達の試験の数日前、カルドナ王国軍が先に動くことになる。ウェスバリア正面の兵をそのままに、見えていない後方兵の中から2個騎兵師団、1個銃歩兵師団、2弓兵師団を抜くと、別働隊として編成、これを平野北部に聳えるガゲンテラ山を北から迂回させ、グルノブルット北からウェスバリア司令部を攻撃せよとの命令を下す。
騎兵師団は馬を下りると、鎧を脱ぎ、その馬を引き、山越えをする。他の部隊もそれに続くように山を越えた。
マイトランド達の試験前日の夜。カルドナ王国からウェスバリアに正式に宣戦を布告すると、山越えをして越境していたカルドナ王国軍別働隊が、ウェスバリア第2軍司令部を急襲、物資集積所に火を放つと、撤退せず、各個に敵の撃破に専念した。
時同じくして、ネイ将軍の守る第1軍団も越境する敵の攻撃を受ける。
ネイ将軍は、念入りに陣地構築にした陣地の堅固な守りで、なんとかカルドナ王国軍戦法を退け、敵の第2派攻撃を予期し、援軍要請を出すことに成功する。
しかし、この援軍の要請に、混乱している第2軍司令部は応じることができず、結果的にネイ将軍の第1軍団を見殺しにすることとなり、第1軍団の構築した陣地を敵に占領されてしまう。
第1軍団の陣地を占領したカルドナ王国軍が、司令部を急襲した別働隊に合図を送ると、別働隊が第2軍司令部より撤退を開始する。
この後、敵の一時後退により、なんとかウェスバリア第2軍本隊は態勢を整えるも、気付いた時には第1軍団の陣地は敵の手に落ちており、兵力の差から後退はしなかったものの、進軍するには物資が足りず、そこに留まることだけしかできなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます