第66話 最終学科試験 2
翌日、マイトランド達が掲示板の前に集まると、結果はマイトランド班の全員が1位に掲載されていた。一部の貴族よりも上位に平民22名の名前が確認できた。
マイトランド達はそれを見るなり拳を握り、突き上げ、歓喜の声を上げると、それを傍で見ていた、フリオニール班、フレデリカ班といった貴族班も惜しみない拍手でマイトランド達の快挙を祝った。
ひとしきり拍手をした後で、フレデリカは、マイトランドの肩に手を置くと、
「初めは文字も書けない、読めない者達だったのに。これでは、教えていた私達が恥ずかしいな。」
「何言ってるんだ、お前達も全員1位だろ。それにお前達が教えてくれなかったら無理だったと思うぞ。ありがとう。フレデリカ。」
「こちらこそ、ありがとう。私はな、お前の・・・。」
フレデリカは何かを言いかけて、少し涙を浮かべると、マイトランドに抱きつこうとした。すると、
「マイトランド、おめでとう。実は少し話があるんだがいいか?」
「ああ、別に大丈夫だが、改まってなんだ?」
フリオニールがフレデリカを遮り、マイトランドを連れ去った。
「実はな、私はこの教育の後、士官学校へ行くことを命じられると思う。」
「そりゃあそうだろう。将軍の育成は急務だからな。それにフリオニールの様に有能な男が将官になれば、救える命があるだろう?」
「それは?」
「まあ、俺も含めて、平民全員が思っていることだ、無能な将軍の意味の解らない作戦で死にたくはないってことだ。わかるだろ?」
「善処しよう。ロンベルトとアーシュライトは一度部隊配属を希望していてな。貴族であるから、側近の帯同を2名許されている。そこでなんだが、ロンベルトにジョディーとジェイクを、アーシュライトにシュウとヘクターを付けてくれるか?」
「ん?なんだ?平民でもいいのか?それになぜ俺に聞く?本人に聞いた方が良いんじゃないか?」
「本人達の了承は、取るつもりだ。帯同する者に平民、貴族は関係ない。」
「そうか、なら俺に異存はない。」
「わかった。お前は士官・・・。」
フリオニールはそこまで言いかけると、二人の会話の終了を待っていた、ヨーゼフが話に水を差す。
「グレッテ卿、もう話は終わりましたか?」
アルファイマーと話がしたかったマイトランドは、
「丁度今終わったところだ。ちょっとこっちに来てくれるか?」
そう言うと、ヨーゼフと隊舎裏に向かった。
「ヨーゼフ、銃を知っているか?」
「それは知っていますとも。他の貴族よりも知っているでしょう。」
「そうか、なら俺のいう事もわかるな。」
「まあそれなりには。」
「ドルトン銃の弱点がわかるか?」
「はい。雨と湿気、それに命中率、連射能力ですね。次弾の装填に時間がかかりすぎるかと。」
「そうなんだ。だから、装填時間を可能な限り、短くすればいいんじゃないかと思ってな。」
「それは?」
「弾を込めるから時間がかかるんだ。弾を込めてあるものをそのまま取り替えたらいいんじゃないか?。」
「ええ?撃発装置ごと取り替えると言う発想ですか?」
「そうだな。撃発装置も火打石とか付けて、いっぱい持っておいて、腰にでも巻いておけば、いいだろう。ちょっと自分でも何言っているか分らないが、要点だけは伝わっただろう?何とかしてくれ。」
「は、はあ。わかりました。可能かどうかはわかりませんが、なんとかやってみましょう。」
「短銃でやってくれ。俺が持っているのが短銃だからな。部隊配置後、グレイグに送らせよう。」
「銃を持っているんですか。それで・・・。わかりました。なんとかしましょう。」
「性能試験には必ず呼んでくれよ。」
アルファイマーは頷くと、自分の班と合流した。
その日の夜、マイトランドは、余程試験結果が嬉しかったのか、ランズベルクから金貨一枚を借りると、班員に祝勝会と伝え、皆との食事にその全てを使った。
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深夜、急報が新兵教育隊に齎される。
マイトランド達の筆記試験の終わりを待っていたかの様に、ハイデンベルグ帝国に過日、宣戦布告をしたカルドナ王国が、国境に兵を駐屯させていることを理由にウェスバリアに対し、宣戦を布告したとの知らせだった。
また、カルドナ王国は先制攻撃と号し、進軍し、越境。ウェスバリア第2軍に大損害を与えた。
新兵教育修了まであと数日、最後の筆記試験を終えた日の夜であった。
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