第45話 新しい模擬戦の準備 2

「次は騎兵だな。ランズベルク、騎兵は右翼を50名左翼を10名で編成したいが、左翼防衛を任せることのできる者はいるか?」


訓練所から戻り、再度陣容を考えながらマイトランドはランズベルクに尋ねた。


 通常、騎兵はフランキングといって、弧を描きながら、歩兵を挟み込み攻撃する手法を取ることが多い、突撃を繰り返すと、損害が出るからである。フランキングは側面攻撃であり、側面の防御力が薄い歩兵部隊には有効である。

 したがって、騎兵の前面には同程度の騎兵を配置するのがセオリーである。


「それ、変な配置だな。訓練通りなら相手は右翼35、左翼30だぜ、35対10じゃあ、左翼は一回の突撃で突破されるぞ?」


「そう思うだろ、ちゃんと考えてあるから大丈夫だ。で、どうだ?」


「ああ、防御を考えるとなると、アーシュライト辺りがいいんじゃないか?俺でもいいぜ。」


 フリオニールの班でロンベルトが攻撃であれば、アーシュライトは防御を得意とする。アーシュライトは目立たないものの堅実な部隊運用で、前回の模擬戦も撃破数22に対し、マイトランド達と戦闘になるまで、負傷者を出さなかったのは、彼の成せる用兵技術があったからであろう。


「お前はダメだ。別にやってもらうことがある。アーシュライトは、歩兵戦は得意か?」


「得意かどうかはわからねえけど、あいつ結構やるぜ。指揮もうまいしな。それにフリオニール様フリオニール様って言ってるんだ。フリオニールの為なら、アイツ死ぬ気で守るぜ。」


「そうか、左翼はアーシュライトに頼むとするか。」


 マイトランドが、アーシュライトの元へ行くと、アーシュライトは二つ返事で了承し、右翼部隊の人選は、左翼部隊の規模を損なわない程度にアーシュライトに一任した。


 この後、先の営倉の疲れが残っていたのか、マイトランドはランズベルクに訓練を任せると、早々に部屋に戻り床に就いた。


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 模擬戦前日になると、マイトランドは各隊の隊長を呼び集め、最終確認と作戦指示を実施した。


 全軍に中央に位置するのが突出したライアネン隊65名、その左側後方に位置するのが左翼1番隊64名、そのまた左側後方に位置するのが左翼2番隊56名、そのまた左側後方に位置するのが左翼3番隊56名、ライアネン隊の右側後方に位置するのが右翼4番隊64名、右側後方に位置するのが右翼5番隊56名、そのまた右側後方に位置するのが左翼6番隊56名の計416名でファランクスを構成する。


 ライアネン隊の後方に、ジョディーとクリスの指揮する、弓、魔法、長槍の混成隊ジョディー隊40名を、2番隊の後方に、フラン指揮する同じく混成隊30名、フラン隊を、5番隊の後方に、シュウが指揮する混成隊30名、シュウ隊を配置し後方支援、障壁などの魔法防御を担当する。


 フラン隊の隣、3番隊の後方にアツネイサ指揮する、長槍、魔法のみの混成隊34名、アツネイサ隊を最左翼騎兵支援と、魔法支援を担当する。


 戦線最右翼にはマイトランドも参加している。ロンベルト隊重装騎兵50名、最左翼にはアーシュライト隊10名が担当する。


 マイトランド班は21名おり、アダムがライアネンの幕僚として参加しており、隊長として班を離れている、アツネイサ、フラン、シュウ、クリス、ジョディーの6名の穴は馬術スキルのあるものをライアネン隊以外から7名抜擢し、それを加えることで埋めた。

 尚、ランズベルクと、ポエルは別行動となるため、20名でのロンベルト隊参加である。


「ライアネン、隊旗をアダムに持たせる。その指示に従ってくれ。事前に説明はしておくが、特に敵は中央突破を狙って来るので、敵ファランクスとの距離が開けば、遊兵である敵騎兵1隊が狙って来るだろう。その際は無理に突撃を受けず、先日伝えた通り、隊を二分して盾で道を作り、後方へ騎兵に突破させると良い。ジョディー隊で突破した騎兵を殲滅する。」


 マイトランドがそう言うと、ライアネンは敬礼し、


「はい、わかりました!」


 ライアネンは敬礼からなおると、直立不動の姿勢に戻り、作戦指示に耳を傾けた。


「フリオニールは、ジョディー隊に加わってくれ。フリオニールは全軍の大将だ、くれぐれも軽率な行動はしないように。」


「了解だ。マイトランドの話を聞いている限り、最後まで何もせずに終わりそうだがな。」


「では明日、皆の奮戦を期待する。解散。」


 マイトランドの言葉で皆は解散した。


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 翌日。全ての班が、模擬戦場に到着し、査閲官の訓示を終え、2軍に分かれると、各軍は戦闘開始の合図を待った。

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