第41話 学科試験 6
その日の夜。マイトランド班は、全員で答え合わせなど、反省会を開いていると、
「やあ、マイトランド、学科試験は終わったのだから、そろそろ模擬戦の準備を始めないか?もちろんフレデリカ嬢も連れて来た。」
そう言って、フリオニールと、フレデリカが入ってくる。もちろん付き添いのロンベルト、アーシュライトも一緒である。
「そうだな。今答え合わせも含め、反省会をしているところだ。少し待ってくれ。」
マイトランドは反省会を手早く終わらせると、戻ってくるなり問いかける。
「そう言えば、フリオニールとフレデリカは試験どうだったんだ?」
「私は1問だけ落としてしまったよ。貴族の作法と軍人の作法は違う物でね。」
「グレッテ卿の言っている問題は解けたんだがな。他を1問落としたよ。」
2人が1問ずつ落としたと聞いて、ランズベルクが、喜び勇んで話に割って入って来た。
「じゃあ俺達が1位だな。平民の俺達に負けるなんて情けない貴族もいたもんだぜ。なあマイトランド。あーあ、明日の結果発表の楽しみが減ったぜ。」
「そ、そうか。」
フリオニールは、悔しそうに肩を落としその一言だけを言うと、マイトランドに続けた。
「そんなことより、模擬戦だ、模擬戦の準備をしよう。」
「そうだな、戦場の地図はあるか?」
「もちろんだ、持ってきた。」
マイトランドの言葉に反応しフリオニールは懐から地図と取り出すと、マイトランドに渡す。
戦場地域の把握は、初期布陣場所、どこに何があるか、どこが狭いか、罠の配置場所、どこが待ち伏せに適しているかなど、様々な情報を得られるからである。
「明日にでもスキルで戦場を見ておこう。敵の兵力は、こちらよりも買収されて3個班多いんだったか?」
マイトランドの問いかけに、少しばつが悪そうにフリオニールは、
「とても言い辛いんだが、平民班もグレンダ嬢に1個班多くとられてしまってね。どうしたらいいものか。平民1~27班がグレンダ嬢の統制下におかれる。残りはこちらだ。」
「こっちは約80名少ないって訳か。騎兵を歩兵5名分と換算すると320名分のの差があるな。で?あちらさんの動きは?調べているんだろ?」
「ああ、重装歩兵用の盾と投擲もできる槍を、大量に平民班の人数分運び込んでいると報告があった。」
「ってことはファランクスか。統制のとれていない平民班に、ファランクスが出来るとは到底思わないけど、こちらもファランクスであればなんとかなるだろう。問題は騎兵の戦力差だな。」
ファランクス。重装歩兵により構成される密集陣形を指す言葉である。戦列正面はその防御力と突進力を生かせとても強いという利点があるが、反面、側面攻撃に弱い、機動力が無いという欠点もある。
「ファランクスか、密集陣形のことだな?左手に盾、右手に槍だったよな?右側がガラ空きになるじゃないか、騎兵でファランクス右列を突破すれば良いのではないか?」
フレデリカが尋ねると、即座にマイトランドは反論する。
「お前はバカか、騎兵が敵より少ないのにか?こちらの騎兵の突撃なんて、当然敵騎兵が阻止するだろう。それにファランクス最右列は、お前の様な考え方をする敵の思考を見抜き、通常その部隊の、最精鋭兵が配置されるものだ。見抜かれている戦法ではどうにもならん。万が一、万が一だぞ?お前の言う通り、騎兵が数騎突破できたとしてその後どうする?敵の大将でも狙いに行くか?」
「申し訳なかった。でもバカはやめてほしい。しっかり勉強するから・・・。」
フレデリカが下を向き、泣きそうになったのを確認すると、
「すまん。言いすぎた。」
と言って、マイトランドも下を向いてしまった。
「まあまあ二人とも、そんなに深刻にならなくても。マイトランド、何か方法はあるか?」
そんな二人を気遣うように、フリオニールが尋ねると、マイトランドは上を向き答える。
「ああ、全員のスキルを調べてくれ。その後に装備を揃えよう。まずはスキルだな、明日までに調べておいてくれ。俺は明日の朝、戦場を見ておこう。」
フリオニールとフレデリカは了承すると、その日は解散した。
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翌日、学科試験の結果発表日。
朝一番で戦場の確認を終えたマイトランドは、朝食を済ませると、班員を伴い、順位の発表会場へ向かった。
順位の発表会場には大きな掲示板があり、順位を確認すると、
1位、フリオニール・フォン・グレッテ 14/15
2位 グレンダ・フォン・ロンメル 13/15
フレデリカ・アレクシス 13/15
などと書かれており、1位にいるはずのマイトランドとランズベルクはおろか、受験した47班全員の名前はどこを探しても確認できなかった。
「おい!これなんだよ!」
別の掲示板を確認したジェイクが叫ぶ。
マイトランドとランズベルクがジェイクの指差す掲示板を見ると、そこにはこう書かれてあった。
“47班は不正の疑いがあり、順位を付けないものとする。尚、首謀者と思われるラッセル2等兵は厳罰に処す。”
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