第29話 模擬戦 8
ドスーン、ドースン
という音と共に倒れる木々、それを見てランズベルクはこう呟く。
「まあ、こんなもんだろ。早く戻ってやらなきゃな。」
ランズベルクは交代の後、新しい指示の元、北東の森林出口付近の木を魔法で伐採し、出口を潰し、陣地に帰還した。
パイクが備えられている場所前まで来ると、ジェイクが叫ぶ、
「待て!ランズベルク、ちょっと待て、ゆっくりだ、そこからゆっくり真っ直ぐこっちに来い、絶対ゆっくりだぞ。」
ランズベルクはジェイクの指示通り、ゆっくりと陣地に進入する。
「ランズベルク、色々ありがとう。負担ばかりかけてすまん。」
「ああ、気にするなって。それより、アレできたのか?ジェイクにゆっくりゆっくり言われたけど、アレって、そこまで強度がない訳じゃないだろ?」
ランズベルクは馬から降りると、マイトランドに尋ねる。
「ジェイクは、アレで結構作業には繊細なところがあるからな。皆で作業したのに壊されたら嫌だってところだろう。仲間思いだしな。」
「ああ、言われてみればな。確かにエリオット、ダン、ロブは、アイツにおんぶに、だっこって感じだもんな。」
「ああ。あの三人うまく使いたいんだけど・・・今回は決戦まで出番なしかな。なかなかね。ジェイクも甘いしな。三人が何かするなら俺がやるって聞かなくてな。」
「ああ、そう言えば、最終的に貴族2班と決戦って言ってたな。どうしてまた2班なんだ?」
「うん、指揮官がそこそこ慎重な様で、森にはもう入らないと思う。プライドの高そうな1班に仕掛けたいんだが、どう思う?」
「マイトランドがそう思うなら、俺は反対しないぜ。今までだってずっとそうしてきたろ?」
事実ランズベルクは、過去マイトランドの作戦計画に反対したことは一度もない。
「ならフレデリカに1班と3班のことを聞いて、作戦会議にでもするか。」
「そうだな。新しい罠も完成したようだしな。」
2人はフレデリカ、ジョディー、ジェイクを呼ぶと、地面に陣地の見取り図を描き、作戦会議を開始する。
「ここでこうなって、こうなって、ここでかかる感じで、ここでは多分回避して、これにかかると、こんな感じだけどどうかな?」
マイトランドが地面に石を置きながら、それを動かし、森林出口から陣地までの誘導経路、罠の数などを確認すると、フレデリカがマイトランドに尋ねる。
「そんな簡単に罠に嵌るかな。相手は貴族だぞ。それもグレッテ卿は自身も爵位を持っているほどの有力貴族だ。頭も良いし、戦闘能力も高い。私などは到底かなわない。特にあの班の副官、ロンベルト・フォン・ライト、アーシュライト・フォン・ラーケンに関しては、スキルも、魔法も、並みの1個小隊ほどの戦力があるぞ。」
そう説明するフレデリカに、不敵な笑みを浮かべてマイトランドは答える。
「だからさ。彼らは自信を持っているだろう?だから罠にかかりやすいのさ。実際こっちも一対一とか、正面決戦なら大分分が悪いだろうが、正面切って戦う必要は無い。プライドが高くて戦闘力が高い彼らほど、簡単な罠に嵌るってもんだ。切り札らしい物を一度見せてしまえば、見せた物を最初に警戒するって人間の真理もついたものだ。ああ、もちろん失敗した場合も考えてあるぞ。」
「そういうものなのか?」
「ああ、多分最後の決戦以外が楽勝だな。それに今回は出来るだけ搦め手のみで敵を圧倒したい。」
「それはどうしてだ?」
「うん?お前はなんで質問ばかりなんだ?少しは自分で考えろ。今回の模擬戦以外の質問はなしだ。それじゃあ、皆に伝えておいてくれ。」
「ランズベルクにはすぐ教えるじゃないか。」
「ランズベルクは俺自身も同じだ。教えて何が悪い。」
ぷうとむくれるフレデリカを尻目に、作戦を話し終え、しばらくすると、イブラヒムが大声でマイトランド達に報告する。
「森林地域、湿地帯の間付近で重装騎兵1個班と騎兵1個班が交戦中。重装騎兵班が圧倒的有利!」
報告を聞くとマイトランドは即座に、
「作戦通り、先ほどの20名は直ちに準備してくれ!貴族1班を招待するぞ!」
そう言って、装備を持ち馬に乗ると、先に陣地をゆっくりと出て行った。
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