第28話 模擬戦 7
アツネイサに食料を届け、マイトランドとポエル、ランズベルクとアツネイサがそれぞれ警戒を交代すると、次の警戒の交代までは何もなかった。罠に引っかかった数人はいたものの、その全てが平民班の生き残りであり、ただの自滅だった。
警戒の交代は負担を強いるポエルとアツネイサを気遣ってのものであろう。
罠の張り替えなど、少し面倒な作業はあったものの、警戒の交代までは何事もなく2日目の朝を迎えると、マイトランドは、森林地域以外の地域をイーグルアイで確認する。
スキルを解除すると、マイトランドは班員達にこう告げた。
「残る班は、騎兵が3個班、歩兵が7個班だ。」
初日に60個班で開始された模擬戦は、2日目になると1/6になっていたのだった。
「多分、平民班は俺達を残し、今日で全滅するだろう。潰し合いを待とう。何かあったら起こしてくれ。」
マイトランドはそう言い残すと、少しの間眠りについた。
だが、少しと時間を置かずに起こされることとなる。
ピューン。
と言う蟇目鏑矢の音を目覚まし代わりに飛び起きると、
「どっちだ?」
「北東方向からだ。移動はしていない。1回騎兵だぜ。」
マイトランドの問いかけに、ランズベルクはいつになく真剣な顔で答える。
「アツネイサと変わってくれるか?北西はランズベルクに任せたい。そこで可能な限り休んでくれ。もし危ない場合は、わかってるよな?」
「任せてくれ。」
マイトランドはランズベルクにアツネイサとの交代の指示を出すと、班員に、
「ジェイク、フラン、シュウ、ジョディー、フレデリカ、と新貴族4名は俺と共に北東方向の森林出口に向かう、装備を整え前進する!急げ!」
そう言うと、自身の装備を整え、皆の出発準備を街、遊撃隊全ての人員の準備が整うと、その足で北東出口へ向かった。
マイトランドは敵との交戦も考えて進軍したが、何事もなく出口付近に到着すると、ポエルが警戒場所から降りてくる。
「ポエル、敵は今どの辺だ?」
マイトランドが確認すると、ポエルは申し訳ないと言った様子で答える。
「さっきまでそこにいた。でももういない。」
「理由は?」
「そのまま入ってくるかと思って。入って来たら一人罠にかかって、それ見て引いていった。」
「引いた部隊の特徴とか覚えてるか?」
「うん、女の子が、一人用の荷馬車に乗ってた。」
「荷馬車?」
「うん、荷馬車。でも荷物は乗らないかも。荷馬車にしては小さい。馬2頭で引いてたし、あの子結構重いのかな?」
「あぁ、それは指揮官用の戦車だな。」
「戦車?」
「ああ、戦闘用馬車、つまり戦車だ。フレデリカ、戦車を使う班は?」
フレデリカは少し考えると、答える。
「多分、ロンメル嬢の班ではないか?」
ロンメル嬢とは、貴族2班のグレンダ・フォン・ロンメルのことである。
ロンメル家は代々、2院制であるウェリステア議会の貴族院を纏めている、由緒正しき家系だ。なぜ貴族の娘が軍に志願するのか、それだけ軍がひっ迫しているという事なのか、それとも自分の娘を軍に志願させることにより、ロンメル自身の支持率を高めようという事なのか、今は本人以外の誰にもわからないだろう。
「とすると、貴族2班か、これで貴族2班には待ち伏せは通じなくなったな。もう森には入って来ないと見るべきだ。どこかで正面から当たるしかない。ポエルありがとう。引き続き警戒を頼むよ。」
そう言って、部隊を引き返した。
陣地に帰ると、班員全員に、
「最終局面は、多分貴族2班と当たることになる。皆で例の準備するぞ。」
マイトランドはそう言うと、貴族1班を迎え入れる準備にとりかかる。2日目の正午に差し掛かろうかとういう時間であった。
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