第22話 模擬戦 1
模擬戦当日
朝礼を終え模擬戦場への移動準備を終えると、注目する班員にドワイト班長が伝えた。
「貴様ら、準備はいいか!これより戦地に向け行軍を開始する!」
「「「イエッサー!」」」
「なんだ!その顔は!腕立て伏せの姿勢を取れ!」
またしても罰則である。模擬戦とはいえ、初の戦場だ。緊張しない訳がない。顔はこわばって当然だ。
腕立て伏せを終え立ち上がると、班長は班員全員の頬をかなりの勢いで叩いて回る。
ジンジンとする痛みに耐える班員であったが、誰一人としてその頬を抑える者はいない!
「貴様ら、気合は入ったか!」
「「「イエッサー!」」」
お決まりである罰則を終えると、マイトランド達47班は、部屋長ヘクターの引率で模擬戦場ファルマース演習場へと向かう。
演習場へ到着すると、演習場前広場に60にも及ぶ全ての班が一同に会する。
全ての班の整列が完了すると、魔力拡声器での声が響き渡る。
「気を付け!」
マイトランド達は、その声に体が勝手に反応し、気を付けの姿勢を取ると、一人の軍人が登壇する。その軍人はいつもの教育隊長ではなく、一度も見たことが無い高官であった。その登壇に併せて魔力拡声器の声は、全ての新兵に一連の動作を要求する。
「フランドール査閲官に対し敬礼!」
「なおれ!」
「査閲官訓示。」
査閲官と呼ばれた、胸元に沢山の勲章を付けた軍人は、壇上で新兵全員を見渡すと、
「新兵諸君、今日は入隊から2週間と日が浅いが、日頃の訓練の成果を、十二分に発揮し、仮想敵とはいえ、敵に臆することなく、勝利を勝ち取ってほしい!我々もそれに合わせ、公平に模擬戦の評価を実施する!新兵諸君全員の検討を祈願して訓示とする。」
査閲官の訓示が終わると、魔力拡声器の声が響き渡る。
「模擬戦準備!」
その声で新兵全員が動き出す。マイトランド達47班もランズベルクの風魔法を用いて、広場から最も遠い、演習場南部、森林地域へと急いだ。
森林地域最深部に到着すると、予定通り、ポエル、イブラヒム組は所定の警戒位置へと移動した。
ランズベルク、アダムス組はと言うと、模擬戦開始前であったため、少しフライング気味ではあるが、ランズベルクの風の範囲魔法で辺りの木を大量に伐採し陣地の構築の準備を手伝った。
その間、もう一方の森林出入り口の警戒が薄くなるが、そこはマイトランドのイーグルアイ+が空から監視を厳にしていた。
ランズベルクは辺り一帯の樹木を斬り倒し終えると、アダムスに木材加工を任せ、イーグルアイに集中するマイトランドの肩に手を置き、模擬戦開始の銅鑼の音を待った。
アダムスが木材の加工をある程度まで終え、フィンの指示で陣地構築が進み、太陽が丁度頭の真上程に上がると、
ドーン、ドーン、ドーン
という魔力拡声器で拡大された、銅鑼の音が響き渡る。
戦闘開始の合図だ。
ランズベルクはアダムスを伴うと、集中するマイトランドに何も言わずに所定の警戒位置へと移動した。
ランズベルクが警戒位置に着いたのを確認すると、マイトランドはイーグルアイで戦場をぐるりと見て回ると、イーグルアイを解く。
「やはり、貴族班の騎兵は、平地と湿地の平民班を狩りに行ったか。」
基本軍隊では練度の低い騎兵は森には入らない。鬱蒼と茂る木々に前進を阻まれ、進軍の速度が遅くなるからだ。
マイトランドの確認した騎兵部隊は全部で6個班、その6個班全てが平民班を狩っている訳だから、貴族達の底意地の悪さが知れるというものだ。
マイトランドは残る騎兵1個班の捜索の為、隠密のスキルを持つアツネイサを森林の警戒へと出し、自身はシュウの作業場へと向かった。
「シュウ、作業を代ろう。陣地正面の木に登って、近くに来る部隊があれば教えてくれないか?」
シュウは作業を中断すると、マイトランドの指示に従い、作業場を離れ、木に登った。
マイトランドは作業を途中で休んでは、イーグルアイで森林以外の地域に目を向け、残る1個班の騎兵を捜索していたが、やはり見つける事はできなかった。
しばらくすると、警戒に出ていたアツネイサが戻ってくる。
表情は分らないが、とにかく焦った様子でこう言った。
「マイトランド、キヘイ、チカクニイル。」
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