第5話 プロローグ 4
深夜二人で戦場を眺めていると、ランズベルクが急にマイトランドの口を押えると小声で、
「誰か来たみたいだぞ。3から4人だ。今、隠蔽の魔法をかけるから静かにしろよ。インビジブルシャドウ」
ランズベルクが魔法を放ってしばらくすると、フードを被った4人の男が時間を置いて順々に建物に入ってきた。
その内の一人、顔に大きな傷のある体格の良い男が口を開く。
「フォックス、ジャッカル、フェネク首尾はどうだ。」
すると、細身で髪が長く目付きの鋭い男が、
「俺は軍司令フランコ・アレクシスと、副軍司令ロタリン・トロンダの首を取った。一緒にいたからな。」
「参謀ラーム将軍・・・。とった・・・。」
3人の内、もっとも背が低く、声の高い双剣の男と、円形の刃物を手で回している、細身で背の高い男は、腰につけていた袋の中から髪の毛を掴んで標的の首を取り出し、血の滴る首を地面に投げ捨てる。
「こっちはオルメアだ。ちーとばかり手こずったぜ。おかげでこのありさまよ。」
最後の男が血の滴る左腕を見せると、なぜか他の3名からは笑いがこぼれた。
「ジャッカル弱い・・・。」
もっとも背の低い男がジャッカルと呼ばれた男を馬鹿にすると、
「うるせぇ、オルメアは俺が来るのが分ってやがったんだよ。弱いとはなんだ!だいたい首はとってきたんだからいいじゃねぇか。」
ジャッカルはそう言うと、2人と同じように首を投げ捨てた。
投げ捨てられた首は、オルメアと名乗り、マイトランドとシャトランジを行い、勝負に負け、パンをくれた、あの気のいい男。無念だったのだろう、死んでなお、顔は怒りに歪み目からは血の涙を流していた。
おそらく、ランズベルクが口を押えてなかったらマイトランドは声を上げていただろう。
「おい、マイトランド、しっかりしろ、このままじゃここから出れないぞ。魔力がそこまでもたない。」
ランズベルクが、呆気にとられるマイトランドに声をかける。大声ではあるが、インビジブルシャドウの魔法の効果で周囲には聞こえていない。
マイトランドは我に返ると、
「失敗するかもしれないが、アレをやってみていいか?」
「好きにしろ、どのみちこのままじゃ、魔力が尽きて殺されるだけだ。」
ランズベルクの了解を得て、マイトランドは地面に手を付き精神を集中すると、一か八かのスキルを使用する。
「皇帝の軍勢!騎兵!」
すると、フードの4人が一斉にマイトランドのいる方向に視線を向ける。
「クソが!ジャッカル!お前付けられたな!逃げるぞ!」
双剣の男が叫ぶと、慌てた様子でフードの4人が、とった首をそのままに、一斉に建物の外に飛び出していった。
「どうやら成功したみたいだな。」
「あぁ、助かった。やっぱりマイトランドだぜ!」
2人はフードの4人が完全に見えなくなるのを確認すると、建物の裏手に回る。
そこには土くれの騎兵の像が2体、裏手の叢を駆けていた。
「まだ、スキルが完全じゃないからな。2体だけか。しょうがないな。失敗しなくて良かったと思おう。」
「失敗したら土が降ってくるだけだもんな。そんなことよりさぁ、あの首どうするよ。」
ランズベルクが尋ねた。マイトランドは少し考えると、
「ランズベルク、お前、あいつらの懐の剣を見たか?」
「あぁ、鷹に斧だったか?」
「あれはイスペリアの国旗じゃない。それはお前だってわかるだろう?この首は弔いの為に、俺達で持って帰ろう。持って帰って旗の事を聞くんだ。それにパンの恩も返せてない。」
「げぇ。生首4つも持って帰るのかよ。戦争どうすんだよ。見ないのかよ。」
「もう見る必要は無い。聞いていただろ?軍司令、副軍司令、参謀がやられたんだぞ。いくら数が多くても司令官がいないんじゃ、ただの烏合の衆だ。それにイスペリアじゃない国の部隊も参戦しているようだ。この戦いに勝ち目はない。」
「せっかく見に来たんだしさぁ。ちょっとだけでもダメか?このまま帰ったんじゃ何しに来たかわからないだろ?たのむよぉ。マイトランドぉ。」
「わかった。ただし、向こうの山まで移動してからな。置いていった首を取りに戻ってくるかもしれないし。」
「しゃぁぁ!話がわかるぜ!じゃあ準備するか!」
2人は建物の屋根を構成していた布を剥ぐと、入れ物代わりに4つの首を包んだ。
包み終わるとランズベルクが
「俺は持ちたくないぜ。気持ち悪いくないか?あと匂いが・・・。」
「大丈夫だ!これは俺が背負う!俺がオルメアを連れて帰る!行こう!」
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