4. クレヨンしんちゃん

 そして自分だけは無関係だと思ってるだろう。クレヨンしんちゃんのところにもドライ君はあらわれる。


 「その或物は寒天のようにぷりぷりしていた。」—— 夏目漱石 道草


 子どものころはいろんなものが怖かった。


 ヘッドライト、天井の染み、ラジカセ、母親の歯ぎしりの音。


 しんちゃんが目を覚ますと、ドライくんは口から水を吹き出して寒天状になる。あっけにとられるしんちゃんに向かってドライくんは諭す。


「いきなり水をぶっかけられたのに君はなぜ怒らない? 怒りなさい」


 怒ったしんちゃんはクレヨンをばきばきにして飲み込み七色の反吐をケツだけ星人からまき散らす。


 みさえとひろしはすでにゼリーになっていて、部屋を散らかしたしんちゃんを叱る気力もない。


 幼稚園バスはとっくに到着している。


 野原家の様子がおかしいことに気づいて呼び鈴を鳴らしたのはよしなが先生だった。しんのすけは何度鳴らされてもベルの音に気づかなかった。よしなが先生はドアを開けてしんのすけを呼ぶ。


「話があるのちょっとここに座って」


よしなが先生はソファに腰かけしんちゃんはその前に正座する。


「ここを舐めて欲しいの」


よしなが先生はゆっくりと足を開く。


 海の味だ、としんちゃんは思った。まゆを八の字にして顔をしかめる。


「ごめんね。急にこんなことさせて。でも大人になればもっとここが好きになるからね」


そんなドライくんの話。

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ドライくん 阿部2 @abetwo

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