第9話 人の勝手

 ある日、羅奈のお父さんが僕に言った。


「クロちゃん、飛ぶ練習をしよう。君は森に帰らなきゃいけない。」


「なぜ?」そう聞いたんだけど、

人間には「カァー!」にしか聞こえない。


「よし!いい返事だ。やるぞ!」


「僕はやるなんて言ってない」といっても

人間には「カァー!」にしか聞こえない。


「さぁ、庭に出てごらん。羅奈も手伝っておくれ。」


「どうして勝手に決めるんだ。」そう言っても人間には「カァー!」としか聞こえない。


僕はロゼの方を見た。

ロゼは目を逸らした。


僕のために言ってるってことはわかる。

だけど、僕は人間と飛ぶ練習なんてしたくない。

人間は飛べないのに僕に飛ぶ練習をしろって言ってる。


森に帰りたいなんて一言も言ってないのに森に帰らなきゃいけないって言う。


僕に無理強いするなんてがっかりした。


僕は必死に抗議した。

「カァー!カァー!カァー!」


その時、羅奈が言った。


「パパ?飛べるようになってもクロちゃんは家族だよね?森に帰ってしまってもまた会えるよね?」


「ああ、そうさ!クロちゃんは大切な家族さ。だから飛んで欲しいんだ。空を飛べるクロちゃんはきっと最高にカッコいいよ。森に帰ってもクロちゃんは羅奈のことを忘れたりしないさ。」


そんなことわからないよ。

僕にも僕の気持ちはわからないんだ。





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