第5話 母さんの声

 ある朝早くに、遠くで聞こえる母さんの鳴き声で目が覚めた。


 僕が庭で犬のロゼと遊ぶのを知らないカラスが見ていたこともある。


 きっと誰かが僕が生きていることを母さんに知らせてくれたんだと思う。


 母さんの鳴き声は僕に帰っておいでと言っているようだった。


 ドアも窓も閉まっていて僕は勝手に外には出られない。


 僕が飛ばない理由は、ドアが閉まっているからじゃない。

 僕の心が勝手に居心地の良い人間の世界を離さないんだ。


 僕が考え事をしていると犬のロゼがドアの前で立ち上がった。

そして、ドアノブを下ろしてドアを開けた。


「ロゼ?君はドアを開けることができるの?」

「ああ、出来る。でも僕はここが好きだからどこへも行かない。」

 ロゼはトイレに行って来ると言い外へ出て行った。

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