第7話 スティーブン セガール氏の気

 気、と言いますと目には見えない物なので、実際、自分で体感しないことには、その存在を認めるのは難しいですよね。このお話は、私が気という存在を強烈に感じた体験談です。


 だいぶ昔のことになりますが私、若い頃、合気道をやっていました。そのきっかけとなったのが、ハリウッドのアクションスター、スティーブン セガール氏のデビュー作、刑事ニコです。いやぁ、格好良かったですね。その映画の戦闘シーンで、セガール氏が使う武道が合気道です。衝撃を受けました。日本にこんな凄い武道があったのか!私もやりたくなって、黄色い電話帳で道場を探しましたよ。今だったらインターネットで探すんでしょうけどね……。


 私が稽古していた道場の先輩のBさん(仮名)と言う方がいたのですが、その方はハリウッドにあるセガール氏の道場で指導員もされていました。アメリカの永住権も持っていまして、日本とアメリカを行ったり来たりしていました。その方には、だいぶ鍛えていただきましたよ。稽古はかなりハードでしたが、だいぶかわいがっていただきました。


 確か平成5年だったと思います。スティーブン セガール氏が、全日本合気道演武大会へ出場することが決定し、来日することになりました。その際Bさんは、セガール氏に同行することになりました。


 そして全日本合気道演武大会当日、私も見に行きましたよ。何しろ、憧れのスティーブン セガール氏を生で見ることができるのですから。


 演武が始まりました。セガール氏の登場です。格好良かったですね。やはりスターですよ。映画同様、襲い来る相手をバッタバッタと投げ飛ばします。背が高いので、ダイナミックで迫力がありました。相手をする御弟子さんも大変だったでしょう。後で聞きましたが、怪我をされた御弟子さんもいられたようです!


 しばらくして私は、トイレに行きたくなったので、席を発ちました。そして、トイレを探して会場をウロウロしていると、なんとセガール氏とBさんが一緒に歩いているではありませんか!私は駆け寄りBさんに挨拶をしました。するとBさんがセガール氏に、


「今度、彼を先生の道場に連れて来ようと思いますので、よろしくお願いいたします」


 と、私ごとき田舎の小市民を、セガール氏に紹介してくれたのです!そんな田舎の小市民の私にスティーブン セガール大先生は、


「よろしくね」


 と、言って手を差し出して握手してくれたのです!


 いやぁ興奮しましたね。その瞬間、鳥肌が立ちましたよ。そして、身体の中にビリビリと電気が走るような感覚がありました。この人は普通の人ではないな!と、感じましたよ。最高に脂の載っていた時期のセガール氏でしたから、物凄いオーラを放っていました。ハリウッドスターを間近で見て、握手までしていただけたのですから、一生の思い出になりましたよ。その後も、全国各道場から来場された先生方の素晴らしい演武を見ることができて、充実した時間を過ごすことができました。


 ──不思議なことに気づいたのは、その後です。会場を発ち、帰りの新幹線をホームで待っている時です。なぜか、背骨の中に弱い電気がビリビリと流れているような感覚があるんですよね。セガール氏と握手した時に受けた感覚がまだあるんですよ。握手した直後であれば、気分も高揚してますし、鳥肌が立つような感覚等の、普通ではない感覚があるのは当然でしょうが、会場から離れて時間も経ち、気分もだいぶ落ち着いていましたから。住まいに着いて夕飯を食べている時も、まだ背骨の中がビリビリしていましたよ。しかし、不快な感覚ではありませんでした。むしろ心地よい感覚でした。もしかしてセガール氏が、挨拶がわりに気を通してくれたのでしょうかね。そんなそんな感じがしました。今まで体験したことのない不思議な感覚でした。


 セガール氏は武道を極めることにより、気を自在に使えるようになったんでしょうか。あるいは、世界を相手に自分を表現できるような人物は、元々常人とは違った超越したエネルギーを持っているのでしょうか。そんな風に思いましたね。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る