読み終えた時、小説という清冽な渦のなかにのみ込まれていた。そんな読後感を抱きました。現代(近未来)という時代が孕んだ問題、それも言語に関する立言がテーマになっていますが、そのテーマは見事に読者をからめとり、肥大化し、やがてさらに大きな虚像を、われわれの目の前に作り出します。ドラマにはもちろんのこと、重厚な設定と想像力にも圧倒される一篇です。