Subsection B04「空へと駆ける」
人語を話す白馬に驚いた様子のユリハに、白馬は補足でもするかのように言った。
「ボクは単なる案内役だからサ。キミを天界にまで連れて来るようにウェラ様から申し付けられただけだヨ。そんなに驚くこともないヨ。詳しいことは、ウェラ様が直接お話したいそうだカラ」
「は、はぁ……」
白馬の言葉に呆気に取られつつもユリハは頷くばかりである。
少しは疑った方が良いのかもしれないが──なんせ、相手はただの馬である。
ヘンテコで妙な喋り方こそしているが、悪い輩には見えない。
「じゃあ、オモテに出ようカ。ココじゃあ、翼も広げられないシ……」
「翼?」
「ウン」
妙なことを言い出し、頷く白毛の馬──。
だが、確かにその白馬の背中には二つの白い翼が生えていた。
「一応、ペガサスのつもりだからサ」
「つもり……?」
何だかよく分からないが、ユリハは素直にペガサスの言葉に従うことにした。
部屋を出て表に出ると、宿屋の亭主や宿泊客から驚きの声が上がった。当のペガサスは、特に気にした様子もなく素知らぬ顔をしていた。
宿屋の外に出ると、ペガサスは二本の翼を思い切り広げた。
「天界に行くには、二つの道があるのをご存知かネ?」
「えぇ、まぁ……」
実際に天界に行ったことはなかったが、有名な話しなのでユリハも噂くらいは聞いていた。
「人間界と天界とを繋ぐ険しい山を登るか、あるいは空を飛んで直接行くかのどちらか、ダヨ。……でも流石に、お客人に登山をしてもらうワケにはいかないからネ。ボクがお迎えに来て、一気に天界まで運ぼうっていうワケサ」
「なるほど〜」と、ユリハは納得して頷いた。だから他の誰でもなく、この白馬が天界からの使いとしてユリハの元を訪れたのだろう。
「サア、乗ってヨ。飛ばすからサ」
ペガサスに促され、ユリハは遠慮しつつも背中に飛び乗った。
馬にの背に乗ることは初めてであったし、ましてや相手は天馬だ。どの様に乗りこなせば良いのかも分からない。
対して、ペガサスの方はさすがは馬といったように人を乗せ慣れているらしい。不安定なユリハの重心も物ともせず「ンじゃ、行くヨ!」と軽いノリで声を掛けた。
「えっ、ちょっとぉ……!?」
まだ心の準備ができていなかったが、有無を言わせずペガサスが翼をはためかせたのでユリハはその背中にしがみついた。
ペガサスは一気に上昇すると、気流に乗って猛スピードで空を旋回した。
「サッサと行くから、振り落とされないように堪えてネ!」
「無理なんですけどぉぉおお!」
ユリハの悲鳴など無視して、ペガサスはさらにスピードを上げて空路を駆け抜けていくのであった。
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