このくだらない世界に終焉を…
火田案山子
第1話
今、世界の命運を賭けた最後にして最大の戦いが始まろうとしていた。
「いよいよ奴との最終決戦だ。みんな!準備はいいな?」
名前:スパイダー
性別:男
年齢:16歳
職業:パラディン
「ああ!いよいよだな!」
名前:スコーピオン
性別:男
年齢:36歳(妻子持ち)
職業:モンク
「奴を倒せば、全てが終わるわ……長かったこの旅も、これで……」
名前:バタフライ
性別:女
年齢:18歳
職業:ハイ・プリエステス
「いよいよですね……レディ…怖いけどがんばりますっ!」
名前:レディバグ
性別:女
年齢:10歳
職業:ウォーロック
「へへっ…早く行こうぜっ!俺はウズウズしてるぜ!」
名前:マンティス
性別:女
年齢:21歳
職業:シーフ
今、世界の平和を取り戻すべく、5人の勇者たちが、諸悪の根源に立ち向かう。
「よし!行くぞおおおっ!!」
「おおおおおおおおおおおおおおっ!!」
かくして、決戦の火蓋は切って落とされた。
そして――――――。
**********************************
「馬鹿!お前そうじゃねえよ!何回いやあ分かんだよ!おめえの頭は幼稚園児以下か?ああっ!?」
飛騨は今日も今日とて、社内で上司に理不尽に怒鳴られていた。
名前:スパイダー→
性別:男
年齢:24歳
職業:サラリーマン
「お前この仕事始めてもう3年目だろ?…ったくいつまでも経っても使えねえなあ…もう死ねよ…」
郡上は今日も今日とて、先輩に暴言を吐かれていた。
名前:バタフライ→
性別:女→男
年齢:24歳
職業:サラリーマン
「げへへ…関ちゃん今日もいいおケツしてるねえ…」
名前:スコーピオン→関
性別:男→女
年齢:24歳
職業:ОL
「
揖斐は今日も今日とて、生意気な後輩にいいように使われてた。
名前:レディバグ→揖斐
性別:女→男
年齢:24歳
職業:サラリーマン
「ねえ…
今日も今日とて、瑞穂は同僚の女性社員たちに陰口を言われていた。
名前:マンティス→瑞穂
性別:女
年齢:24歳
職業:ОL
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「ああああああああっ!くそっ!」
居酒屋「ゆうし屋」に5人は集って飲んでいた。
あの戦いで、不運にも5人共全滅して、気が付いたら前世の記憶を保ったまま、この世界に転生していたのだった。
そして時が流れ、5人は運命の再会をし、直感的にお互いの正体をすぐに理解し合った。そして再び仲良くなった5人は、同じ会社への就職に成功したのだが…あろうことかその会社は他の人間も給料も労働環境も最悪な、
「…滅びればいいのに…こんな世界……」
飛騨の言葉に他の4人も首肯した。
「だいたいあの会社以前に、この世界ってクソだよな……」
郡上が呟いた。男として生まれた為か、口調はすっかり男になっている。
「ニュース観ても嫌なニュースばかりで気が滅入りますしねえ…」
揖斐は全員と同い年になっても相変わらずの他人行儀だ。この歳になっても見た目は中性的で童顔で背も低く、よく周囲から子供扱いされている。
「あたし……今朝も電車の中で触られたわ……」
パーティー最年長で妻子持ちだったスコーピオンは、かつては筋骨隆々の大男だったのだが、今では大きいのは乳と尻だけの女、関になってしまった。毎日の様に痴漢とセクハラに頭を悩ませている。
「私……昨日遺書書いたわ……」
転生して強気な俺っ子からすっかり弱気になってしまったマンティス改め瑞穂。
「はあ……」
俺たちは揃って溜め息を吐いた。
「大体、この世界は魔法が存在すらしないってのが本当にクソだよなあ……」と飛騨。
「グリフォンはいないけどグリフォンの上半身と翼のワシって鳥やグリフォンの下半身を持つライオンって動物がいたり、ペガサスはいないけど翼の無いペガサスの様な馬って動物がいたり、ケルベロスはいないけど頭が1つしかないケルベロスの様な犬って動物がいたり…」と郡上。
「ドラゴンはいないけど大昔に絶滅したという恐竜というドラゴンに似た動物がいたらしいですし…」と揖斐。
「天使も悪魔も幽霊も神も妖精も巨人も存在しないって…本当どうなってるの?この世界…」と関。
「代わりに科学とかいう意味不明な力があるのよね、この世界……テレビとかⅭⅮとか電話とかインターネットとか……何年もこの世界で使って来たけど未だにどういう仕組みか分からないわ……」と瑞穂。
「世界は平らで、空では太陽や月や星が動いてるってのが常識だったのに、この世界では世界は地球という玉で、自ら動いて回ってるだって?……雨が降るのも、地震が起きるのも神の仕業ってのが常識だったのに……何だよ自然現象って……?」と頭を抱える飛騨。
ここに来てからというもの、彼らの信じてきた常識は全て覆った。
彼らは前の世界で実際に神が雨を降らせるのも地震を起こすのも見たし、天使も悪魔もドラゴンもグリフォンもペガサスもケルベロスも幽霊も妖精も巨人も見て生きてきた。住んでいた町では人間と獣人とエルフとドワーフとホビットも一緒に暮らしてたし、山や森や砂漠や沼や草原や洞窟や海などには危険なモンスターたちがわんさかといた。
なのにこの世界は何だ!?
社会を形成しているのは人間だけ。動物たちは前の世界のに比べ小さいのばかりだし大抵はペットと呼ばれて人に飼われていたり、動物園とかいう施設で檻やガラスに閉じ込められて見世物にされている。挙句、この世界の人間たちにはモンスターという共通の敵がいない為か、あちこちで人間同士が争い合っている。戦争、犯罪、飢餓、金銭、食糧、領土、資源問題、無能な政治家による
何だこのふざけた世界は!?
「くそ…前の世界で俺たちが持ってた力さえ取り戻せれば、こんなくだらない世界なんか簡単に滅ぼせるのに……」
飛騨の言葉に他の4人も首肯した。
彼らは皆、前の世界ではそれぞれ世界最強クラスの実力を持っていたのだ。最後に戦った諸悪の根源を倒すにはあと一歩及ばなかったものの…。
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その後、明日も仕事だから…と4人と別れた飛騨。
正直言うと、仕事なんて行きたくはないのだが…。
「……久々に、あそこによってから帰るか……」
そう言うと飛騨は、疲れた心を癒すべく、その場所へ向かった
そう、高い金と引き換えにひと時の快楽を得られる場所―――ソープへ……。
このくだらない世界に終焉を… 火田案山子 @CUDAKI
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