第10話 創造魔法DIY
そもそも魔女や魔法使いというのは、この世界では身近なものだったりします。悪いものでは無いんですよね。何せ貴族からあぶれた人の落ち着き先の一つなので。
まずは王様に仕える文官・武官になる、そのほかに宮廷魔術師になる、その辺が一般的な爵位を継がない貴族の落ち着き先です。
そして、貴族であっても社交界が面倒だったり馴染めなかったりした人は野に降ります。血筋としては貴族なので魔法が使えますので、町や辺境に腰を落ち着けて魔女や魔法使いとして生きていきます。中には冒険者として旅をする人もいますが、そういう方は魔女や魔法使いに比べてもっと少ないです。
「今日はあいにく薬の手持ちは無いんですが、家畜などを買うにはどこに行ったらいいですか?」
「魔女様のお宅まで届ける様手配しましょう。何が必要ですかな?」
「えーと、牛一頭に羊を三頭程、雌鶏が一羽……とりあえずこの位で。おいくらですか?」
「ふむふむ……、おぉい、ユージンを呼んでくれ」
村長さんが私の背後の村人さんに声を掛けます。たぶん酪農家の方でしょう。
「どうした? 村長。なんだお前さんは」
髭を生やした日に焼けた男性がやってきました。いかにも酪農家って感じです。私を見て不思議そうにしています。
「近くに越してこられた魔女のマリー様じゃ。牛と、羊を三頭、雌鶏を一羽分けて欲しいそうだ。お前のところでいいのを見繕ってやってくれ」
「魔女様か、そりゃありがてぇ。かかぁが風邪ひいたりした時にゃ世話になるぜ。ついてきな」
そう言ってユージンさんは踵を返したので、私は村長さんにお礼を言って後について行きました。
ユージンさんの家はやはり酪農家で、たくさんの家畜を飼っていらっしゃいます。
毛艶の良さそうな牛と、元気のいい雌鶏、あとは羊を三頭見繕ってくださり、支払いは銀貨3枚との事でしたので快くお支払いしました。これで牛乳と卵とお肉をゲットです。まぁ、締めた事がないのでお肉に関してはまた改めて締め方を教わりにこなきゃいけませんが。
「よかったらお肉も譲ってもらえませんか?」
「いいぜ。畑でとれた野菜もつけてやろう。あぁ、支払いは気にすんな。相手はお貴族様だからな、家畜分に上乗せしてある」
ぼったくりを自ら白状してからから笑っているのは、こう、毒気を抜かれるというか、まぁいっか、と思わせるというか。
気持ちいい方なのでこちらも笑って受け取る事になりました。ぼったくりといっても、たいして上乗せしていないのでしょうね。
肉と野菜を受け取って【収納】した私は、後で家畜を届けてもらう約束をして村を後にしました。
家の隣にはちょうどいい空き地があるので、そこに家畜小屋を建てる事にしましょう。
「【創造】」
イメージするのはユージンさんのお宅の家畜小屋の小さいバージョンです。牛舎があり、羊の小屋と柵があり、鶏用の少し広めの網戸のついた小屋がある。基礎の建築なんかはよく分からないので、丈夫で倒れないように、と思いながら呪文を唱えました。
地面から生えるように木材が組み上がっていき、立派な家畜小屋の完成です。
中に入って柱を叩いてみたりしましたが、しっかりした木造建築です。うん、家との外観の取り合わせも悪くありません。
今日は野菜の苗や小麦を買わずに帰って来たので、夕飯は香草焼きにでもしましょう。まだ昨日の残りのサラダやケーキもあるので充分なご飯です。
神様クリス様様です。祈りを捧げてからいただく事にしましょう。まだ夕飯には程遠いので後々ですが。
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