08 旅芸人



 難癖をつけてきた男性は、「謝るならちゃんと謝れよ。誠意の示し方ってもんがなってねぇな。それなら俺がもっと良い誠意の示し方を手取り足取り教えてやろうか」そういってこちらの腕に手を伸ばすが、それを阻むものがいた。


「おやめなさい、それ以上彼女に手をだせばこの国の王女ミリアム様が黙っていませんよ」


 そう言ったのは、宿の常連客である旅芸人だった。


 私に難癖をつけてきたお客様は「チッ」と舌打ちして、どこかへと言ってしまう。


「ありがとうございます」


 お礼を言った私を慰めるように、旅芸人は「いいえ、とんでもない」と言い、面白い芸を一つみせてくれた。


 そのおかげで、静まり返っていた宿屋の雰囲気が明るくなった。


 だけど、ただの旅芸人に見えるのにどうしてさっき王女様の名前をだしたのだろう。


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