03 不思議な男性



 追放後。

 しばらくとぼとぼと道を歩いていたら、どこから現れたのか一人の男性が私に声をかけてきた。


「あの姫さんが教えてくれた通りだったな。よう、こんなとこでしょぼくれた顔してんじゃねーよ。エメラルダ」

「あなた、どうして私の名前を知っているの?」

「んな事より、さっさと行くぞ」

「えっ」


 急に現れた彼の名前はバルド。

 なぜか私の事を知っている様子の彼は、強引にこちらの手を引いて掴んだ。


「行くって、一体どこへ?」

「決まってんだろ。お前が幸せになれるとこだ」


 ぜんぜん知らない人なのに、なぜか私は彼の手をはねのけようとは思えなかった。

 彼に導かれるまま、まっすぐ道を歩いて行く。


 不思議と、先程まであった悲しみや不安は全部消え去っていた。

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