第355話 勇者と魔王が対立する理由
翌日から、ソードはもらった宝箱の中身チェック。私は頼まれ事などなどを片付ける。だが火急案件はゴーレムの外殻作成だ。主に私とソードの心の安寧を図るためにね!
魔王様が魔王城の一室(しかもダンジョンの方)に作業用のお部屋を用意してくれたのでそこにこもり、せっせと作った。
ときどきお邪魔虫共が押しかけてくるが、ソードが追っ払ってくれている。
「ちょっとお前ら、いい加減にしろ。インドラはそもそもがドSだぞ? これ以上怒らせるとお前ら拷問されるから。その辺にしておきなさいって」
的確なアドバイスでつまみ出してくれた。
寝る間も惜しんで作り続け、ようやく全員分完成!
隠していた魔石を取り出して、はめ込み、魔法陣に起動のための魔力を流した。
次々に動き出す、リョーク、シャール、ホーブ、ブロンコにプロンク、最後にミニミニ鎧騎士クン一号。
「ソードさーん、元気ー?」
「ソードさーん、復活したよー」
次々に、
ミニミニ鎧騎士クン一号なんか、ヨチヨチ歩いてソードの足に抱きついたぞ!
チクショウ、なんだよそのハーレム状態は!
ここで勇者のハーレムスキルが炸裂かよ!
キィイー! とハンカチの端をかむお決まりをやった。
またもや泣いてしまったソードだったが、ゴーレムハーレムで皆に慰められて落ち着いたらしい。ミニミニ鎧騎士クン一号を肩に乗せてコッチを見た。
「しかたないだろ、俺のせいじゃねーよ」
背を向け、うずくまってマジックバッグをあさり、わかりやすくいじけている私に向かって弁解したソード。
「いいもん。魔王に頼まれたミニミニ鎧騎士クン作ってるもん」
「すねるなって」
すねるに決まっているだろ!
立ち上がりソードに向き直ると、厳かに宣言した。
「勇者と魔王が対立する理由が、今まさに判明したな」
「違う。それは絶対に違う。そんな下らない理由で勇者と魔王が対立するわけがない」
下らない理由とか言ったし!
ぶっすー! と膨れている私の脇に手を入れて、抱え上げるソード。
「機嫌直せよ。作るの手伝うからよ」
…………ソードに手伝わせると、次のミニミニ鎧騎士クンもソードになつくんじゃないか?
とはいえ、約束したため作らないわけにはいかないので作りましたけどね。
さっさと作り、ソードになつく前に持っていこうとしたのにソードがいつの間にか寄ってきて至近距離にいる。
そして新入りに色目を使うソード。
「ミニミニ鎧騎士クン一号とはちょっと違うか?」
「違わない。だからお前はミニミニ鎧騎士クン一号をかわいがっていろ」
見ろ。ミニミニ鎧騎士クン一号がやきもちをやいて、私を槍で突っつくではないか。なにゆえにソードを突っつかないのかが不明だが。
「……だから、俺のせいじゃないんだって。しょうがないだろ。それに、そのせいで人間の仲間が出来なかったんだし、いいことばかりじゃねーんだぜ?」
どんな弁解をしているのだ。まるで私が人間ではないみたいじゃないか。
そして弁解をしつつも新しいミニミニ鎧騎士クンを構いだすソードだった。
私はソードからミニミニ鎧騎士クン二号をさっと奪い、魔王様にあげるべくすたこら歩く。
ソードが後ろから叫んでいる。
「あっ! もうちょっといいだろ!」
何がだ。何も良くない。
「……そういや、ミニミニ鎧騎士クン一号ってよ、タブレットではしゃべってたのに、元の身体になったらしゃべらなくなったんだけどよ、なんでしゃべるようにしなかったんだ?」
マジか。ソードが後ろをついてきたぞ。そんなに新しい子を取られるのが嫌なのか。
「まだ学習が足りないんだろう。ボイス機能はついているので、そのうちシャールのようにしゃべり出すから待て。そしてミニミニ鎧騎士クン一号をかわいがれ」
私はシッシッと手で追い払いつつすたこら歩くが、まったく止まる気配のないソード。さらにはミニミニ鎧騎士クン一号がソードに貼りついてついてきている。カオスだね。
そうしてソードは魔王の執務室まで私のあとをついてきた。
あ、ダンジョンじゃない魔王城ね。
私、ジャングルをものすごい勢いで突破したのにさ、ソードったらぴったり後ろについてきて、あれやこれや話し掛けるのよ? ミニミニ鎧騎士クン二号を見ながら! どんだけだよ!
何? 【英雄色を好む】なの? ゴーレム色が好きなの?
ものすごい勢いで飛び込んできた私たちに顔色一つ変えず表情筋をピクリとも動かさない魔王様。
顔を上げた魔王様に私はすぐさまミニミニ鎧騎士クン二号を突き出した。
「ソードに取られる前に、渡すぞ!」
「もうちょっといいだろ!」
ソードがミニミニ鎧騎士クン二号を奪おうとするので私はキレた。
「ミニミニ鎧騎士クン一号! ソードを槍で刺してやれ!『浮気者!』と叫んでやれ!」
半分冗談で、貼りついているミニミニ鎧騎士クン一号に向かって叫んだらば。
「…………浮気者~!」
――――ミニミニ鎧騎士クン一号の、初めてしゃべった言葉がそれでした。
慌ててソードがミニミニ鎧騎士クン一号をなだめに入った。
私はその隙にミニミニ鎧騎士クン二号を魔王様に渡す。
「感謝する」
魔王様、無表情に喜んだ。
魔王様がそっと指を出すと、ミニミニ鎧騎士クン二号はヨチヨチ歩いて、エイッと槍を突き出し、コチッ☆
基本ですね。
そのラブリーさにソードが一瞬目を奪われ、再び「浮気者~!」と叫ぶミニミニ鎧騎士クン一号。
もう、浮気者としかしゃべらないかもしれないな! ソードに向かってな!
小型化したシャールの内装も作った。
やたら押しかけてきた連中もこき使ってやったわ!
そして魔王様に『職人』の役割を与えられている魔族にも手伝わせた。
さすが、魔王様の治める国の職人。なかなかに芸術センスがある。前よりも小洒落た装飾品や家具がどんどん出来上がった。センスだけをとったらドワーフよりも優れているかもしれない。
そうしてようやく! 全部作り終えた。
「拍手?」
パチパチパチパチ。
さーて、これで再び魔王城ダンジョンアタック出来るぞー。
……とか思っていたら。
ソードが厳しい表情をしてこちらを振り返った。
「…………スカーレットが代理送信してきた。王城に至急来いってよ」
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