第328話 ギャーーーーー!!

 ワンコボス部屋を出て、三十階層に突入した。

 入るとすぐに暗闇だった。二十階層までは情緒のある廊下が続く迷路みたいな階層だったけど、ここは……。


「ギャーーーーー!!」


 バリバリバリッ!!

 私は悲鳴を上げ電撃を走らせて、ソードにしがみつく。

「おい!? どうした!?」

 ソードの問いに答えられず、私はプルプル震えた。

「おい、どうしたんだよ。何があった? ……リョーク、わかるか?」

 ソードが焦った声でリョークに聞いた。

「お母さんの嫌いな虫がいっぱい出ましたー」

 リョークが答えてくれる。

「…………え? インドラは、虫好きだろ?」

「苦手な虫が一種類います。ソイツらが巣くう階層みたいですねー」

 リョークの報告に、私は絶望した。

「わぁあー!! 無理だー! これ以上進めないよー!」

 泣いた。


「怖いよー! ソード、怖いよー!」

「わかったよ。見るな触るな、な?」

 ソードになだめられ慰められて、しゃくりあげながら震えながらもなんとか落ち着いた。

「さっきの雷魔術、お前が使ったのか?」

 ソードに聞かれた私はうなずいた。

 とっさに電撃を走らせたのに、それでも全滅しないんだよ、やつらは!

「……お前……。大規模殲滅魔術、使えるんじゃねーか」

 ソードが呆れたように言ったけど。

「全部、死んで、ないもん! まだ生きてるもん! わぁあーん!!」

 私がわめくとソードが慌てた。

「わかった。ごめん。だから泣くなよ、な?」

 ソードが抱っこしてくれた。

「「「出撃します」」」

 ホーブたちがリョークのポッドから出てきて残りを電撃魔術でチクチク退治し始めた。

「リョークのポッドに隠れてるか?」

 ソードが私を案じて言ってくれたけれど、私はブルブルと首を横に振った。

「冒険、するんだもん!」

 隠れてソードに攻略してもらうなんてやだやだぃ!

「わかったよ……。じゃあ、お前がさっきの魔術で倒してって、洩らしたのを俺たちがやっつけるから。リョークに乗ってろ。――リョーク、抱えてやってくれ」

 リョークにパスされた。


 リョークにしがみつきながら電撃を何度も走らせ、その他窒素で凍らせたりいろいろして退治した。

 こんなときに、なんでも見えちゃうアイが悔しい。

 ソードは逆になんでも見えちゃうグラスを装着して、全滅させるべく細かく攻撃。

 前にあげたガンを駆使している。

 ソードはすっごい楽しそうだけど、私は見たくもないし、やつらに関してはゲーム感覚になれない!

「よーし、オールクリア」

 どこで覚えたその言葉? みたいなこと言ってるし。

「何点だ?」

 とか、いつの間にかリョークと点数争いしてるし!


 途中階層からハエっぽいのも混じって参戦し始めた。

 ハエは嫌いだけど怖くはない。

 ハエが混じったのでやつらがちょっとだけ減ってむしろ助かった。

 それにしてもなんだろうこの階層、害虫階かよ!

 別世界の人間なら絶対突破出来ない階層だな!

 しゃくりあげながら、ソードに伝えた。

「こ、これ、は、べ、世界の、勇者、対策、階、層。別、世界、人、ここ、嫌い、無理、帰る」

「…………そっか。お前がそうなるくらいだから、他の連中はもっとダメなんだろうな」

 なんて言いつつも、そっとメッセで尋ねてるぽいぞ。


『俺は、まぁ、社畜だったから? 平気かどうかはともかく、帰るまではいかないけど。インドラ様とスカーレットお嬢はダメだろうなー』

 がアマト氏の答え。


 スカーレット嬢からのレス。

『無理無理無理無理! ぜーーーーったい、無理! 即帰りますわよ! 絶対に写真は送ってこないで下さいね! 話題も禁止!』

 うん、私も同意する。

 けど、帰れない。


「そっか、苦手らしいな。俺としちゃ、昆虫魔物の一種だろ? って思うけど、別世界だと違う扱いなのか?」

 ソードが納得して尋ねてきたので、思いっきりうなずいた。

「別、世界、人類の、天敵。アマト氏、真の勇者。退治出来る、尊敬される」

「…………へー」

 ソードが目を細めながら相づちを打った。

 なんでそんな表情? 信じてないの?

 コレに関してはスカーレット嬢だって同意するぞ!


『人類の天敵ですわよ!』

 ってスカーレット嬢もメッセ送ってきてくれた。

『そんなお話あったよなー』

 ってのん気にアマト氏が書いてるけどさ。

 私もスカーレット嬢も本気で言っているよ!!


「じゃ、俺が全部退治してやるから、見てろ」

 なぜかソードの気合が入ってる。

 別世界では人類の天敵だけど、この世界じゃ昆虫魔物の一種なんでしょ?

 それに、退治を見ててとか言われても見たくないので嫌です。


 電撃と窒素で熱いのか寒いのかわからん状態の中、ソードが無双。

 ガンを駆使してすっごい速さで退治してる。

 リョークと、ポッドから飛び出したホーブも負けじと退治してて、

『ソードさーん、お母さーん。僕も参戦したいですぅー』

 とシャールまでがポッドの中から物申してきたけど、却下!

「ダメだ! 汚れてしまう! お前はホーブほど速く飛べないから、やつらに集られたらとんでもないぞ!」

 声を裏返して叫んだ。

『魔素障壁出しますから~』

 って言われて思い出した。

「あ。そんな技を持ってたか」

 でも汚れて欲しくないんだけどなぁ……。

 渋々許可すると、デカい図体で飛び出し、飛んだ。

 そして眼球……ではなく丸い窓からオートでガンを出してきてショットしてるし、塊にはランチャーを打ち込んでる。

 群がってくる敵は防衛魔術の電撃を魔素障壁と合わせ討ち落としてるし、なかなかの無双状態。

 しかし……なんでシャールまで好戦的になったんだろ?

 しゃべるのはかわいいからいいけどさぁ。

 お強請りしてまで攻撃したいってなんだろな?

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