第329話 私の唯一の弱点(正気を失うという意味で)
害虫全てを駆除して、ボス部屋前へ。
いつの間にか点数争いをしてたらしいよ。
「お母さんの魔術が一位ですけど、外すとソードさんが一位ですー」
「そっか。ま、しかたねーな。……おい、大丈夫か?」
ソードが、ヒックヒック泣く私を心配して頭をなでる。
「早ぐ出だいよー」
鼻声でうまくしゃべれない。
「わかった、瞬殺するから。リョークに守ってもらってろ」
ソードが扉を開けて、入る。
「ギャーーーー!!」
群れを成して飛びかかってくる、黒光りするやつら。
ソードがすごい速さで唱えた雷魔術で、一挙に駆除してくれた。
「ギャーーーー!!」
さらにボスが、黒光りするデッカいのが、立ち上がり腹と脚を見せて威嚇。
ソレをソードが、最大出力レーザー剣で細切れに。
最後に炎の魔術で燃やしてくれた。
ソードは大きく息を吐くと、こっちに来て私をなだめるように頭をなでまくる。
「ホラ、倒したぜ? だからもう、そんなに泣くなよ」
ビャービャー号泣している私です。
いや誰だって、泣くって! ソードは泣いてないけど!
「怖いよー! 怖いよー!」
「もう片付けたから、いなくなったから。泣くなって……」
リョークから私を受け取り抱っこし、背中をポンポンたたいて私をあやしながらボス部屋をあとにした。
疲れた私たちは、安全地帯である次の階の入り口でシャールにお泊まりした。
ソードは、適当に出してレンチン魔術でチンして食べるから寝て落ち着きなさい、って言って私を寝かしつけた。
――目が覚めたら、ソードはずっと起きてたのかそれとも寝たけど先に起きたのか、そばで酒を飲みながらミニミニ鎧騎士クン一号と遊んでいた。
小さな棒を持って、机に乗ったミニミニ鎧騎士クン一号と小さく戦っているぞ。
ソードがちょっと力を入れて槍を払うと、ヨットット、みたいに踏鞴を踏むミニミニ鎧騎士クン一号がラブリー。
じーっと見ていたら気付いたのか、ソードがこちらを向いた。
「大丈夫か?」
私はうなずくと起き上がり、遠い目をして絶望的に宣言した。
「周回は無理だった」
ソードが頭をなでてくれる。
「次はポッドに隠れてろよ。それならいけるだろ? 別に無理して倒すことねーだろ、俺だって苦手な敵はいるんだしよ。お互いカバーしてこうぜ」
って言われて、しぶしぶと小さくうなずく。
でもでもぉ、ソードが『苦手な敵がいる』って言ってもさー、そこまででもないじゃん?
私は、ホントに苦手なんだよ?
いやもう苦手とかかわいい言い方は出来ないよ。私の唯一の弱点、天敵だから!
しばしの休憩の後、再びダンジョンアタック開始。
念のためにリョークたち全員に洗浄魔術をかけてメンテナンスしてから歩き始めた。
「よくもまぁ、魔王様はあんな害虫を城に棲まわせてるよな? 正気を疑うぞ?」
ブツクサ言っていたらソードにツッコまれた。
「お前が『勇者対策に有効』ッつったんだろうが。実際、お前の様子を見たら有効だよな。怖い物ナシのはずのお前があれだけおびえる魔物かよ。知られたら大変だぜ?」
私はうなずいた。
「この星を滅亡させてしまうからな」
ソードがピタッと硬直して足を止めた。
「…………は?」
こっちを向いて聞き返したので私は説明してやった。
「あんなの、お前とリョークたちがいたからなんとか正気を保てたってだけだ。一人だったら気が触れて禁呪の大魔術でこの星を滅ぼすところだったな。それくらいの天敵なんだぞ! アレは!」
ソードが絶句して私を凝視し、その後すごい真剣な顔になった。
「俺、あの連中はお前の視界に入る前に全部殺すから。安心しとけ。だから気をしっかり保てよ? あと、魔王様にあの階層の改変を頼もうぜ? 踏破の報酬は宝箱じゃなくていいだろ、改変してもらおうぜ。魔王様だって、ダンジョンコア破壊どころじゃねぇ、星を滅ぼす勢いの魔術かけられたら困るだろ」
……そんな、私たちの都合を聞いてもらえるのか?
『魔王だ。その件に関しては、考えておく。なので、城ごと消滅させないよう、お願いする』
ハイ、城内アナウンス流れましたー。考えてくれるってー。
……それにしても、魔王様、暇なのかな?
ずっと私たちを見ていません?
いいけどさ……。ラスボス部屋に到達していないのに積極的に話し掛けてくるダンジョンコア様は初めてだぞう。
「よかったな」
ってソードが頭をポンとたたいた。
うん、そうだね。
各方面に良かったね。
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